検察官が犯行後一年一月余を経過したときに名誉毀損罪として公訴を提起した公訴事実を裁判所が侮辱罪に該当する所為と認めるときは、被告人に対し公訴の時効が完成したものとして免訴の言渡をなすべきである。
名誉毀損罪として起訴された事実を侮辱罪と認定する場合と公訴の時効
刑訴法250条,刑訴法337条4号,刑訴法411条1号,刑法230条,刑法231条
判旨
起訴状記載の罪名が名誉毀損罪であっても、裁判所が認定した事実が侮辱罪に該当する場合、公訴時効の成否は認定された侮辱罪の法定刑を基準に判断すべきであり、起訴時に既に時効が完成していれば免訴とすべきである。
問題の所在(論点)
起訴状における訴因・罪名が名誉毀損罪(時効期間3年:当時)であっても、裁判所がより軽微な侮辱罪(時効期間1年)の事実を認定した場合、公訴時効の成否はどちらの罪を基準に判断されるべきか。また、起訴時に既に認定事実の時効が完成していた場合の措置が問題となる。
規範
公訴時効の期間は、起訴状に記載された訴因や罪名にかかわらず、裁判所が実体的に認定した犯罪事実に適用される法定刑を基準として算定される。認定された事実が起訴時において既に法定の時効期間を経過している場合には、刑事訴訟法337条4号に基づき免訴の判決を言い渡さなければならない。
重要事実
被告人は名誉毀損罪(刑法230条)の訴因で起訴された。しかし、裁判所は名誉毀損の事実は認めず、侮辱罪(刑法231条)の事実のみを認定した。侮辱罪は当時「拘留又は科料」に該当する罪であり、その公訴時効期間は1年であった。記録によれば、被告人の犯罪行為が終了してから1年1ヶ月余りが経過した後に検察官による公訴提起が行われていた。
あてはめ
本件で認定された事実は侮辱罪(刑法231条)に該当し、その時効期間は1年である。被告人の行為終了から公訴提起までに1年1ヶ月余が経過していることから、起訴の時点で既に侮辱罪としての公訴時効は完成していたといえる。訴因が名誉毀損罪であったとしても、裁判所が同罪の事実を認めず侮辱罪の事実を認定する以上、時効完成の事実は動かず、有罪判決を維持することは著しく正義に反する。
結論
被告人に対し免訴の言渡しをなすべきである。したがって、有罪とした原判決を破棄し、被告人を免訴する。
実務上の射程
実体判決において認定される罪と起訴状の罪名が異なる場合、時効は「認定される罪」を基準に判断されるという原則を示す。答案上では、訴因変更の要否とは別に、裁判所が職権で調査すべき公訴提起の有効性(訴訟条件)に関する議論で活用できる。
事件番号: 昭和44(あ)414 / 裁判年月日: 昭和44年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不特定または多数の人が認識し得る状態(公然)において、事実を摘示せずに人を蔑視する価値判断を表示した行為は、侮辱罪(刑法231条)を構成する。 第1 事案の概要:被告人の具体的な言動や場所、対象者についての詳細は判決文からは不明であるが、被告人が人を蔑視する表現を用いた行為について、原審は公然性と…