一 第一審の無期懲役刑の判決に対し、検察官が控訴を申し立て、死刑の判決を求めることは、憲法三九条に違反しない(当裁判所昭和四四年(あ)第一二一二号、同四五年三月二六日第一小法廷判決参照)。 二 第一審判決が死刑以外の言渡しをしたのに対し、控訴審がこれを破棄して死刑を言い渡すことは、憲法三六条に違反しない(当裁判所昭和四四年(あ)第一二一二号、同四五年三月二六日第一小法廷判決参照)。
一 第一審の無期懲役刑の判決に対し検察官が控訴を申し立て死刑の判決を求めることと憲法三九条 二 第一審判決が死刑以外の言渡しをしたのに対し控訴審がこれを破棄して死刑を言い渡すことと憲法三六条
憲法36条,憲法39条,刑訴法351条1項,刑訴法400条但書
判旨
死刑そのものは憲法36条の「残虐な刑罰」に当たらず、第1審の無期懲役判決に対し検察官が控訴して控訴審が死刑を言い渡すことも憲法36条及び39条後段に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 検察官が被告人の不利益に控訴を申し立て、第1審より重い刑(特に無期懲役から死刑への変更)を求めることが、憲法39条後段の二重処罰の禁止に触れるか。 2. 死刑制度そのもの、あるいは控訴審において死刑へ変更することが、憲法36条の「残虐な刑罰」に該当し違憲とならないか。
規範
1. 憲法39条後段(二重処罰の禁止)との関係:検察官が控訴を申し立て、第1審判決よりも重い刑の判決を求めることは、第1審で無期懲役に対し控訴審で死刑を求める場合を含め、同条に違反しない。 2. 憲法36条(残虐な刑罰の禁止)との関係:死刑そのものは同条にいう「残虐な刑罰」には当たらない。また、裁判官が法律上許された範囲内で刑を量定した場合、被告人から見て過重な刑であっても直ちに同条に違反するものではなく、控訴審が第1審の判決を破棄して死刑を言い渡すこともその例外ではない。
重要事実
被告人に対し、第1審が無期懲役刑を言い渡したところ、検察官が量刑不当を理由に控訴を申し立てた。控訴審は第1審判決を破棄し、被告人に対して死刑を言い渡した。これに対し弁護人は、検察官による重刑を求める控訴や、控訴審による死刑判決が、二重処罰の禁止(憲法39条後段)や残虐な刑罰の禁止(憲法36条)に違反するとして上告した。
あてはめ
1. 憲法39条について:大法廷判例の趣旨に照らし、検察官が上訴により重い刑を求めることは一連の刑事手続におけるプロセスの範囲内であり、新たな処罰を科すものではない。無期懲役から死刑への変更であってもこの論理は維持される。 2. 憲法36条について:死刑制度自体が残虐な刑罰でないことは判例の確立した見解である。具体的な量刑において、法律の範囲内で死刑が選択された場合、それが第1審の無期懲役を破棄した結果であっても、犯情に照らしてやむを得ないものであれば、憲法が禁じる残虐な刑罰には当たらない。本件の記録によれば、死刑の選択は犯情に照らし妥当と認められる。
結論
検察官による不利益控訴および控訴審による死刑判決は、憲法36条および39条後段のいずれにも違反しない。
実務上の射程
死刑制度および検察官控訴の合憲性を再確認した判決である。答案上は、検察官控訴制度の合憲性が論点となる際に憲法39条との関係で引用する。また、量刑判断において第1審より重い刑を科すことが直ちに憲法36条の問題となるわけではないことを示す際にも活用できる。
事件番号: 昭和41(あ)1007 / 裁判年月日: 昭和42年7月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑を定めた刑法の規定は、日本国憲法第36条が禁じる「残虐な刑罰」には該当せず、憲法に適合する。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cは、強盗殺人罪(刑法第240条後段)等の罪に問われ、第一審および控訴審において極刑(死刑)の判決を受けた。被告人Aの弁護人は、強盗殺人の罪に対して死刑を定めている刑法…
事件番号: 昭和45(あ)293 / 裁判年月日: 昭和47年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度そのものは憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。また、強盗殺人罪等の重大な犯罪に対して死刑を科すことは、諸般の情状を考慮した上でやむを得ない場合には憲法上許容される。 第1 事案の概要:被告人は強盗殺人等の罪に問われ、一審および二審において死刑の判決を受けた。弁護人は、死刑制度そ…