判旨
横領罪が成立するためには、被告人に自己の占有する他人の物を不法に領得する意思が認められなければならない。第一審が判示した事実関係の下で、受領した金員全額について不法領得の意思を肯定した判断は適法である。
問題の所在(論点)
金員の占有者が、その受領した全額について、横領罪の主観的構成要件要素である「不法領得の意思」を有していたと認められるか。特に、委託の趣旨に反した処分が行われたといえるかどうかが問題となる。
規範
不法領得の意思とは、他人の物の占有者が、委託の趣旨に反して、権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいう。横領罪の成立には、この意思が客観的な行為として外部に発現されることが必要である。
重要事実
本件における具体的な事実は判決文からは不明であるが、第一審において、被告人が自己の占有する金員全額について、何らかの形で委託の趣旨に反する処分行為を行った事実が認定されていたものと推認される。
あてはめ
最高裁判所は、原判決が維持した第一審判決の事実関係を前提とすれば、被告人が金員全額について不法領得の意思を有していたと判断したことは是認できるとした。具体的なあてはめの詳細は判決文からは不明であるが、認定された事実関係が、金員を自己の所有物と同様に処分する意思を強く推認させるものであったと解される。
結論
被告人に金員全額についての不法領得の意思を認めた判断に誤りはなく、横領罪の成立を肯定した。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
不法領得の意思の有無が争点となる横領事件において、事実認定の妥当性を支える判例として機能する。答案作成上は、委託の趣旨と実際の処分行為の乖離を指摘し、不法領得の意思を基礎付ける際の標準的な判断枠組みとして参照すべきである。
事件番号: 昭和23(れ)1412 / 裁判年月日: 昭和24年3月8日 / 結論: 棄却
一 横領罪の成立に必要な不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき權限がないのに所有者でなければできないような處分をする意思をいうのであつて必ずしも占有者が自己の利益取得を意圖することを必要とするものではなく、又占有者において不法に處分したものを後日に補顛する意思が行爲當時にあつたからとて横…