判旨
日米安保条約のような高度の政治性を有する国家行為は原則として司法審査の対象外であり、また、米軍施設内における表現の自由の行使も無制限に保障されるものではない。
問題の所在(論点)
1. 日米安保条約のような高度の政治性を有する国家行為について、裁判所は憲法適合性を審査し得るか。 2. 米軍施設という立入禁止区域内における集団示威運動は、憲法21条1項により保障されるか。
規範
1. 日米安保条約の承認のように高度の政治性のある国家行為は、特段の事情のない限り裁判所の審査権の外にある(統治行為論)。 2. 憲法21条1項の保障する表現の自由といえども無制限ではなく、他人の権利や公的な管理権限との調整が必要であり、立入りが禁じられた特定の場所における表現活動が当然に保障されるわけではない。
重要事実
被告人は、日米安保条約第6条に基づきアメリカ合衆国軍隊が使用する区域(立入禁止場所)に立ち入り、集団示威運動を行った。この行為が刑事罰の対象とされたことに対し、被告人は安保条約の違憲性および憲法21条1項(表現の自由)の侵害を主張して争った。
あてはめ
1. 安保条約の承認は、高度の政治性を伴う国家行為であり、先行する大法廷判決の趣旨に照らせば、裁判所の審査権の範囲外であると解される。 2. 被告人が立ち入った場所は、条約に基づき合衆国軍隊が使用し、かつ立入りが禁じられた区域である。このような場所における集団示威運動は、先行判例の趣旨に照らし、表現の自由の保障の範囲内にあるとはいえない。
結論
被告人の行為を有罪とした原判決に憲法違反はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和37(あ)994 / 裁判年月日: 昭和38年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】日米安全保障条約のように、主権国としての存立の基礎に関わる高度の政治性を有する国家の行為は、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り、司法審査の範囲外となる。また、日本が指揮権を有しない外国軍隊の駐留は、憲法9条2項前段が禁止する「戦力」には該当しない。 第1 事案の概要:被告人らは、アメリカ合…
統治行為論の適用例(砂川事件大法廷判決の踏襲)を示すとともに、他人の施設管理権や特定の公的機能を持つ場所における表現の自由の限界(パブリック・フォーラム論前夜の限定的な解釈)を論じる際の論拠として使用できる。
事件番号: 昭和56(あ)561 / 裁判年月日: 昭和57年11月16日 / 結論: 棄却
一 道路における集団行進に対し道路交通法七七条一項の規定による許可を拒むことができるのは、当該集団行進の予想される規模、態様、コース、時刻などに照らし、これが行われることにより一般交通の用に供せられるべき道路の機能を著しく害するものと認められ、しかも、同条三項の規定に基づく条件を付与することによつても、かかる事態の発生…
事件番号: 昭和42(あ)2091 / 裁判年月日: 昭和44年12月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高度の政治性を有する条約については、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り、司法審査の対象外として統治行為論の法理を適用すべきである。 第1 事案の概要:被告人らは、昭和35年に締結された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(新安保条約)の承認決議等に関して起訴された。弁護人…
事件番号: 昭和48(あ)321 / 裁判年月日: 昭和49年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】日米安保条約の違憲性は、被告人の具体的な行為の違法性判断に影響を及ぼさない限り、上告理由とはならない。また、集団示威運動に関する条例による制約は、憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、愛知県条例(行進又は集団示威運動に関する条例)に違反する行為等の罪に問われた。上告審において、弁護…
事件番号: 昭和38(あ)2788 / 裁判年月日: 昭和41年6月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高度の政治性を有する日米安全保障条約等の内容の違憲性は、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り、司法審査の範囲外である。また、手続上の不備があったとしても、相手方がそれを理由に拒まずに公務が行われた場合、これに対する妨害行為は公務執行妨害罪を構成し得る。 第1 事案の概要:被告人らは、日米安全…