判旨
日米安全保障条約のように、主権国としての存立の基礎に関わる高度の政治性を有する国家の行為は、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り、司法審査の範囲外となる。また、日本が指揮権を有しない外国軍隊の駐留は、憲法9条2項前段が禁止する「戦力」には該当しない。
問題の所在(論点)
高度の政治性を有する条約(安保条約)の違憲性について裁判所は司法審査権を行使できるか(統治行為論)。また、外国軍隊の駐留は憲法9条2項前段の「戦力」に該当するか。
規範
高度の政治性を有する条約の違憲審査については、司法裁判所の純司法的機能の使命を超えるものであり、原則としてその審査権の範囲外である。ただし、当該条約の内容が「一見極めて明白に違憲無効であると認められる」場合に限り、司法審査の対象となる。また、憲法9条2項前段の「戦力」とは、わが国が主体となって指揮権・管理権を行使し得るものを指し、外国の軍隊はこれに含まれない。
重要事実
被告人らは、アメリカ合衆国軍隊が駐留する立川飛行場内(砂川町内)への立ち入りが日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(旧安保条約)に基づく刑事特別法違反に問われた。弁護側は、同条約に基づく米軍の駐留自体が憲法9条に違反する戦力の保持であり、同条約および刑事特別法は違憲無効であると主張した。
あてはめ
安保条約は主権国としての日本の存立に関わる高度な政治性を有し、内閣および国会の政治的・自由裁量的判断と表裏をなすものである。そのため、一見極めて明白に違憲無効とはいえない。また、駐留米軍については、日本側が指揮権・管理権を有していないため、日本自体の戦力には該当しない。したがって、平和維持を目的とする外国軍隊の駐留を許容することは憲法9条等の趣旨に反するとは認められない。
結論
安保条約およびそれに基づく米軍の駐留は、一見極めて明白に違憲無効とは認められず、司法審査の範囲外である。したがって、本件における違憲の主張は採用できない。
事件番号: 昭和44(あ)1454 / 裁判年月日: 昭和44年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】日米安保条約のような高度の政治性を有する国家行為は原則として司法審査の対象外であり、また、米軍施設内における表現の自由の行使も無制限に保障されるものではない。 第1 事案の概要:被告人は、日米安保条約第6条に基づきアメリカ合衆国軍隊が使用する区域(立入禁止場所)に立ち入り、集団示威運動を行った。こ…
実務上の射程
統治行為論のリーディングケースとして、高度の政治性を有する国家行為(特に条約や解散等)の司法審査の限界を論ずる際に引用する。審査基準として「一見極めて明白な違憲」という限定的な枠組みを示す必要がある場合に有効である。
事件番号: 昭和34(あ)710 / 裁判年月日: 昭和34年8月4日 / 結論: その他
刑訴規則第二五四条の跳躍上告事件において、審判を迅速に終結せしめる必要上、被告人の選任すべき弁護人の数を制限したところ、その後公判期日および答弁書の提出期日がきまり、かつ弁護人が公判期日に弁論をする弁護人の数を自主的に○人以内に制限する旨申し出たため、審理を迅速に終結せしめる見込がついたときは、刑訴第三五条但書の特別の…
事件番号: 昭和34(し)28 / 裁判年月日: 昭和34年6月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所がした決定に対しては、刑事訴訟法上の特別抗告を申し立てることは許されない。 第1 事案の概要:日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基づく行政協定に伴う刑事特別法違反被告事件において、最高裁判所が被告人らの弁護人の数を制限する決定を下した。これに対し、弁護人らが当該決定を不服…
事件番号: 昭和38(あ)2788 / 裁判年月日: 昭和41年6月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高度の政治性を有する日米安全保障条約等の内容の違憲性は、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り、司法審査の範囲外である。また、手続上の不備があったとしても、相手方がそれを理由に拒まずに公務が行われた場合、これに対する妨害行為は公務執行妨害罪を構成し得る。 第1 事案の概要:被告人らは、日米安全…
事件番号: 昭和34(し)26 / 裁判年月日: 昭和34年6月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所がした決定に対しては、刑事訴訟法上、特別抗告を申し立てることは許されない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cに対する刑事特別法違反被告事件において、最高裁判所が昭和34年4月28日に被告人の弁護人の数を制限する決定を下した。これに対し、弁護人側が当該決定を不服として特別抗告を申し立てた…