一 道路における集団行進に対し道路交通法七七条一項の規定による許可を拒むことができるのは、当該集団行進の予想される規模、態様、コース、時刻などに照らし、これが行われることにより一般交通の用に供せられるべき道路の機能を著しく害するものと認められ、しかも、同条三項の規定に基づく条件を付与することによつても、かかる事態の発生を阻止することができないと予測される場合に限られる。 二 道路における危険の防止等道路交通法一条所定の目的のもとに、道路使用の許可に関する明確かつ合理的な基準を掲げて不許可とされる場合を厳格に制限したうえ、道路を使用して集団行進をしようとする者に対しあらかじめ警察署長の許可を受けさせることとした同法七七条一項四号、長崎県道路交通法施行細則(昭和三五年同県公安委員会規則第一〇号。同四七年同県公安委員会規則第四号による廃止前のもの)一五条三号は、表現の自由に対する公共の福祉による必要かつ合理的な制限として憲法上是認される。 三 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法二条は、不合理な差別法規として憲法三一条に違反するものではない。
一 道路における集団行進に対し道路交通法七七条一項の規定による許可を拒みうる場合 二 道路における集団行進につき許可制を定めた道路交通法七七条一項四号、長崎県道路交通法施行細則(昭和四七年同県公安員会規則第四号による廃止前のもの)一五条三号と表現の自由 三 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法二条と憲法三一条
道路交通法77条1項,道路交通法77条2項,道路交通法77条3項,長崎県道路交通法施行細則(昭和35年同県公安委員会規則第10号・昭和47年同県公安委員会規則第4号による廃止前のもの)15条,憲法21条,憲法31条,日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法2条
判旨
道路交通法等の道路使用許可制は、交通の安全と円滑を図る目的のもと、道路の機能を著しく害し、かつ条件付与によっても事態を阻止できない場合に限り許可を拒めるものと解されるため、憲法21条に違反しない。
問題の所在(論点)
道路交通法77条1項4号及び地方自治体の施行細則に基づく道路使用許可制が、表現の自由(憲法21条1項)を不当に制約するものではないか。また、同規定が「明確性の原則」に反しないか。
規範
事件番号: 昭和44(あ)1454 / 裁判年月日: 昭和44年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】日米安保条約のような高度の政治性を有する国家行為は原則として司法審査の対象外であり、また、米軍施設内における表現の自由の行使も無制限に保障されるものではない。 第1 事案の概要:被告人は、日米安保条約第6条に基づきアメリカ合衆国軍隊が使用する区域(立入禁止場所)に立ち入り、集団示威運動を行った。こ…
表現の自由は無条件に保障されるものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を免れない。道路使用許可制において、許可を拒めるのは、当該集団行進等の規模、態様、コース、時刻等に照らし、道路の機能を著しく害すると認められ、かつ、警察署長が条件を付与することによってもかかる事態を阻止できないと予測される場合に限られる。この基準は明確かつ合理的であり、表現の自由に対する必要かつ合理的な制限として合憲である。
重要事実
被告人らは、道路において集団示威運動(デモ行進)を行おうとしたが、道路交通法77条1項4号及び長崎県道路交通法施行細則の規定に基づく所轄警察署長の許可を得ずに行進等を行った。これに対し、道路使用許可制が表現の自由を保障する憲法21条に違反し違憲である、また規定の内容が曖昧不明確であるとして争われた事案である。
あてはめ
道路交通法の目的は交通の安全と円滑(同法1条)にあり、77条2項は許可基準を明確かつ合理的に定めている。本件規制は、一般交通の用に供されるべき道路機能を著しく害し、かつ条件付与(同条3項)でも事態を阻止できない場合に限定して許可を拒むものである。したがって、集団行進の性質に配慮しつつ、交通秩序維持との調整を図るものとして合理性が認められる。また、規制の場所や対象も明確であり、不明確ゆえに違憲となる余地はない。
結論
道路交通法77条1項4号等の規定は、憲法21条に違反しない。
実務上の射程
集団示威運動に対する「許可制」の合憲性を判断した重要判例である。答案では、表現の自由を制約する法律の合憲性を論じる際、目的の正当性と手段の必要性・合理性を基礎づける規範として引用する。特に「条件付与によっても事態を阻止できない場合に限られる」という限定解釈の枠組みは、警察署長の裁量を制約する論理として重要である。
事件番号: 昭和47(あ)2146 / 裁判年月日: 昭和50年9月30日 / 結論: 棄却
一 道路交通等保全に関する条例(昭和二四年秋田県条例第二五号)四条三項による許可条件の付与は、現に切迫した公衆に対する危害を防止するためばかりでなく、公衆に対する危害を予防するため公衆に対する危害に発展する可能性のある行為を禁止、制限する場合にも許される。 二 道路交通等保全に関する条例(昭和二四年秋田県条例第二五号)…
事件番号: 昭和48(あ)321 / 裁判年月日: 昭和49年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】日米安保条約の違憲性は、被告人の具体的な行為の違法性判断に影響を及ぼさない限り、上告理由とはならない。また、集団示威運動に関する条例による制約は、憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、愛知県条例(行進又は集団示威運動に関する条例)に違反する行為等の罪に問われた。上告審において、弁護…