判旨
高度の政治性を有する条約については、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り、司法審査の対象外として統治行為論の法理を適用すべきである。
問題の所在(論点)
憲法81条に基づく司法審査権の範囲と、高度の政治性を有する条約(新安保条約)の違憲審査の可否(統治行為論の適用可否)。
規範
主権国としての我が国の存立の基礎に重大な関係をもつ高度の政治性を有する国家行為については、裁判所の司法審査権が及ぶとしても慎重であることを要する。したがって、当該行為が憲法の規定に違反することが「一見極めて明白に」認められない限り、司法裁判所はこれに法的判断を下すべきではない(統治行為論)。
重要事実
被告人らは、昭和35年に締結された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(新安保条約)の承認決議等に関して起訴された。弁護人は、新安保条約が憲法9条及び前文に一見明白に違反するものであり、原審が司法審査を行わなかったことは憲法81条等に違反すると主張して上告した。
あてはめ
新安保条約は、我が国の存立の基礎に重大な関係をもつ高度の政治性を有するものである。このような条約が憲法9条等に違反して明白に違憲であるとは認められない。また、衆議院における条約承認決議等の手続についても、議院自律権等の観点から裁判所の審査権は及ばない。加えて、本件公訴提起が社会正義に反し公訴権の濫用に当たると認めるに足りる資料も存在しない。
結論
新安保条約は一見明白に違憲とはいえず、司法審査の対象とならない。したがって、原判決の判断に憲法違反はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
統治行為論に関するリーディングケース(砂川事件大法廷判決)を再確認した判決である。答案上は、条約の違憲審査制が問われた際、「一見極めて明白」な違憲性の有無を基準として、高度の政治性を理由に審査を限定する枠組みとして活用する。
事件番号: 昭和38(あ)2788 / 裁判年月日: 昭和41年6月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高度の政治性を有する日米安全保障条約等の内容の違憲性は、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り、司法審査の範囲外である。また、手続上の不備があったとしても、相手方がそれを理由に拒まずに公務が行われた場合、これに対する妨害行為は公務執行妨害罪を構成し得る。 第1 事案の概要:被告人らは、日米安全…
事件番号: 昭和41(あ)616 / 裁判年月日: 昭和42年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項の刑事免責は正当な労働組合活動にのみ認められるものであり、暴力の行使に至る行為は正当な範囲を逸脱するため、免責の対象とならない。 第1 事案の概要:被告人らは、労働組合活動の一環として行動したが、その過程において暴力を行使するに至った。弁護人は、改正前の公共企業体等労働関係法4条…
事件番号: 昭和41(あ)617 / 裁判年月日: 昭和42年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項の刑事免責は、労働組合の正当な行為についてのみ認められるものであり、暴力の行使に及ぶ行為は、正当な組合活動の範囲を逸脱するため、刑事免責の規定は適用されない。 第1 事案の概要:被告人は、労働組合活動の一環として本件行為に及んだが、その態様は暴力の行使を伴うものであった。第一審お…
事件番号: 昭和61(あ)1311 / 裁判年月日: 平成3年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】争議行為等の労働組合活動が正当性を有し違法性を欠くというためには、その動機や目的のいかんにかかわらず、態様が社会通念上許容される限度を超えないものでなければならない。 第1 事案の概要:被告人らは労働組合活動の一環として何らかの行為(具体的な実行行為の内容は判決文からは不明)に及んだが、その態様が…
事件番号: 昭和41(あ)1424 / 裁判年月日: 昭和43年7月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働基本権を保障する憲法28条の下においても、争議行為等に伴う暴行・脅迫等の違法な行為について正当防衛(刑法36条1項)が成立するためには、急迫不正の侵害に対し、自己又は他人の権利を防衛するため「やむを得ずにした行為」といえることが必要である。 第1 事案の概要:被告人らは、労働争議の一環として行…