いわゆる吹田事件の上告審決定
判旨
刑法234条の「威力」とは、人の意思を制圧するに足りる勢力をいうと解すべきであり、憲法31条の適正手続に反して不明確であるとはいえない。
問題の所在(論点)
1. 威力業務妨害罪における「威力」の意義、および同概念が憲法31条に違反して不明確といえるか。 2. 集団示威行動が威力業務妨害罪を構成するか。
規範
刑法234条にいう「威力」とは、人の意思を制圧するに足りる勢力をいう。この概念は、憲法31条が要求する刑罰法規の明確性の原則に照らし、不明確であるとはいえない。
重要事実
被告人ら4名は、吹田操車場構内において、集団示威行動等を行った。この行動が威力業務妨害罪(刑法234条)に該当するとして起訴されたところ、弁護側は「威力」の概念が不明確であり憲法31条に違反する、また正当な表現活動として憲法21条により保護されるべきである等と主張して上告した。
あてはめ
1. 「威力」とは、人の意思を制圧するに足りる勢力を指すものであり、過去の判例(最大判昭28.1.30等)に照らしてもその意義は確立している。したがって、法文が不明確であるとの主張は前提を欠く。 2. 吹田操車場構内における被告人らの具体的な行動態様(詳細は判決文からは不明だが、原判決が認定した事実)に照らせば、それは単なる正当な集団示威行動の範囲を超え、業務を妨害するに足りる「威力」の行使にあたる。したがって、威力業務妨害罪の成立を認めた原判断は相当である。
結論
威力業務妨害罪における「威力」の概念は明確であり、憲法31条に違反しない。また、本件集団示威行動に威力業務妨害罪を適用することは憲法21条に反せず、正当である。
実務上の射程
威力業務妨害罪の「威力」に関するリーディングケースの一つ。表現の自由を標榜する集団行動であっても、それが「人の意思を制圧するに足りる勢力」を用いるものである限り、同罪が成立し得ることを示している。答案上は、威力概念の定義(人の意思を制圧するに足りる勢力)を引用する際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和31(あ)1864 / 裁判年月日: 昭和32年2月21日 / 結論: 棄却
刑法第二三四条にいう「威力ヲ用ヒ」とは、一定の行為の必然的結果として、人の意思を制圧するような勢力を用いれば足り、必ずしもそれが直接現に業務に従事している他人に対してなされることを要しない。