判旨
刑法108条の「焼損」とは、火が媒介物を離れて建造物に燃え移り、独立して燃焼を継続する状態に達したことをいう(独立燃焼説)。
問題の所在(論点)
刑法108条の現住建造物等放火罪の既遂時期、すなわち「焼損」の意義がいかなる状態を指すか。物理的損壊や効用喪失が必要かが問われた。
規範
刑法108条の現住建造物等放火罪における「焼損」の意義については、目的物が火の媒介物を離れて独立に燃焼を継続する状態に達したことをもって足りる。火力の作用によって建造物の重要部分が失われることや、効用を喪失することまでは必要としない。
重要事実
被告人は、現に人が住居に使用している建造物に放火したとして、現住建造物放火罪の容疑で起訴された。上告審において上告棄却の決定がなされたことに対し、被告人は異議(即時抗告)を申し立てたが、本件判決文からは犯行の具体的態様や延焼の程度に関する詳細は不明である。
あてはめ
放火罪は公共の平穏を保護法益とする罪であるため、火が媒介物(マッチや新聞紙等)を離れて建造物自体に燃え移り、自ら燃焼を続ける状態(独立燃焼)に至れば、公共の危険が発生したといえる。したがって、その時点で「焼損」があったと認められ、既遂罪が成立すると解すべきである。
結論
本件異議申し立てには理由がないため、棄却される。独立燃焼の状態に達していれば、現住建造物放火罪が既遂となる。
実務上の射程
放火罪の既遂時期を判断するリーディングケース(独立燃焼説)として、論文試験では必須の規範である。現住建造物(108条)、非現住建造物(109条)のいずれにも適用される。答案上は、火が天井や柱などの建造物の一部に移った事実を指摘し、独立燃焼に至ったことを認定して既遂とするのが一般的である。
事件番号: 昭和28(す)202 / 裁判年月日: 昭和28年5月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が刑訴法405条所定の事由に該当しないとして上告を棄却した決定に対し、不服を申し立てる規定は存在せず、異議の申立ては不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、最高裁判所が刑事訴訟法405条各号所定の上告理由に該当しないと判断し、同法414条および386条1項3号に基づき上告を棄却した決…
事件番号: 昭和29(あ)2390 / 裁判年月日: 昭和33年4月25日 / 結論: 破棄差戻
放火被告事件の控訴審において、被告人の自白する放火の手段方法では独立燃焼を合理的に認められないとの主張を排斥するにあたり、一審における受命裁判官の右放火手段方法の検証調書の記載(実験の結果)は独立燃焼の結果を生じなかつたにかかわらず、この点についての鑑定を含む証拠調の請求を却下し、単に、右実験の結果によれば、被告人自白…
事件番号: 平成23(あ)775 / 裁判年月日: 平成24年2月29日 / 結論: 棄却
現住建造物等放火被告事件につき,ガスコンロの点火スイッチを作動させて点火し,台所に充満したガスに引火,爆発させたとの訴因に対し,訴因変更手続を経ることなく,何らかの方法により上記ガスに引火,爆発させたと認定したことは,引火,爆発の原因が上記スイッチの作動以外の行為であるとした場合の被告人の刑事責任について検察官の予備的…