一 第二事実の納屋については敢て検証調書添附の写真を俟たなくても全焼したことを推認できる記載がある。それ故原判決はこの点について理由不備はないしかも訊問調書添附の図面等を除いても右供述が独立性がある場合にはこの部分のみを証拠調をしてそれを証拠とすることを妨げないことについては当裁判所の判例とするところであり(昭和二四年(れ)第二一四五号同年一二月一三日第三小法廷判決判例集第三巻一二号一九八一頁)この理は検証調書の場合にも異るものでない。 二 検察官が任意の捜査として鑑定の嘱託をしたものは他に何らかの証拠能力を失わせるような事情のある場合を除いて証拠能力がないと論ずることはできない。又水差の鉱物性油の鑑定を求めただけでは未だ如露には鉱物性油が存在したことを確認することの所論鑑定書を作成した鑑定人の喚問を請求したものとはいい得ない。
一 検証調書添付の図面等について証拠調がなされていない場合と右検証調書を証拠とすることの適否 二 検察官の任意捜査としての嘱託に基く鑑定書の証拠能力−鑑定の請求と鑑定書を作成した鑑定人の尋問の請求
旧刑訴法340条1項,旧刑訴法341条,旧刑訴法336条,旧刑訴法410条19号,旧刑訴法337条,旧刑訴法228条,刑訴応急措置法12条
判旨
放火罪における「焼燬」の有無は、火が媒介物を離れて目的物に燃え移り、独立して燃焼を継続するに至ったか否かだけでなく、その損壊の程度を総合して判断すべきである。建物の一部が炭化し、あるいは全焼した事実が認められる場合には、刑法上の焼燬に該当する。
問題の所在(論点)
放火罪における「焼燬」の該当性を判断するにあたり、建物の炭化や全焼という事実をどのように評価すべきか。また、検証調書の記載から焼燬の程度を認定することの是非が問題となった。
規範
現住建造物等放火罪(刑法108条)等における「焼燬」とは、火が媒介物を離れて目的物である建造物等に移り、独立して燃焼を継続するに至った状態をいう。その認定に際しては、検証調書等の証拠に基づき、建物の柱の炭化状況や屋根等の焼失程度といった客観的な損壊状態を総合的に考慮して判断する。
重要事実
被告人がA所有の納屋およびB所有の納屋に放火したとして起訴された事案。第一事実の納屋については、検証調書により、補修された棟木等を除き、柱の露出面全面が炭化していることが判明した。第二事実の納屋については、検証調書の記載および添付写真等の証拠から、建物が全焼したことが認められた。弁護人は、証拠の齟齬や認定の不備を理由に、焼燬の程度を推認するには不十分であると主張して上告した。
あてはめ
第一事実については、検証調書に「取り替えられたものを除く柱の露出面全面は炭化している」との記載があり、これは火が建物に燃え移り、その構造部を損壊させるに至ったことを示す。第二事実についても、検証調書の記載から建物が「全焼」したことが認められ、独立燃焼を経て建造物の重要部分を焼失させたといえる。これらの事実は、いずれも火が媒介物を離れて独立して燃焼を継続し、建造物を毀損したことを裏付けるに足りるものである。したがって、原判決がこれらの証拠に基づき焼燬の部位・程度を推認した過程に合理的な疑いはない。
結論
本件各納屋の損壊状況は「焼燬」に至ったものと認められる。したがって、放火罪の既遂成立を認めた原判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
放火罪の既遂時期(焼燬の概念)に関する独立燃焼説を前提としつつ、実務上その認定には「建造物の重要部分の燃焼・毀損」という客観的事実が必要であることを示している。答案上は、火が媒介物を離れた点だけでなく、柱の炭化や全焼といった具体的事実を拾い、建造物自体の効用を喪失させる程度の燃焼があるかを論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和23(れ)707 / 裁判年月日: 昭和23年11月2日 / 結論: 棄却
一 現行刑事訴訟法における控訴審は覆審であつて、訴訟手續の全部を更新するのであるから、第一審の訴訟手續についてたとえ所論のような違法(辯護人に關する公判調書の誤記及び辯護人に對し公判期日を通知しなかつたこと)があつたとしても、その違法は控訴審の判決に影響を及ぼすものではない。 二 所論のような違法は第一審の訴訟手續を違…
事件番号: 昭和43(す)169 / 裁判年月日: 昭和43年8月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法108条の「焼損」とは、火が媒介物を離れて建造物に燃え移り、独立して燃焼を継続する状態に達したことをいう(独立燃焼説)。 第1 事案の概要:被告人は、現に人が住居に使用している建造物に放火したとして、現住建造物放火罪の容疑で起訴された。上告審において上告棄却の決定がなされたことに対し、被告人は…