證人Aの原審における供述豫審における供述記載その他原判決舉示の證據を綜合すれば、A及びその家族の現に居住する本件家屋の一部たる三疉間の床板約一尺四方竝びに押入床板及び上段各約三尺四方を燒燬したる原判示事實の認定を肯認することができる。そして原判決は右のごとき現に人の居住する家屋の一部を判示程度に燒燬したと判示した以上被告人の放火が判示媒介物を離れて判示家屋の部分に燃え移り獨立して燃燒する程度に達したこと明らかであるから、人の現在する建造物を燒燬した判示として欠くるところはないものといわなければならない。
放火罪における燒燬の意義
刑法108條,舊刑訴法360條1項
判旨
放火罪における「焼燬」とは、火が媒介物を離れて建造物等の本体に燃え移り、独立して燃焼を継続し得る状態に達したことをいう。現に人が居住する家屋の床板等を焼燬した事案において、右の状態に達していれば現住建造物等放火罪の既遂が成立する。
問題の所在(論点)
放火罪(刑法108条)の既遂時期である「焼燬」の意義および判断基準が問題となる。
規範
刑法108条等の放火罪における「焼燬」とは、放火の媒介物を離れて、建造物等の構成部分に火が燃え移り、それが独立して燃焼を継続するに至った状態を指す(独立燃焼説)。
重要事実
被告人は、証人A及びその家族が現に居住する家屋に放火した。その結果、当該家屋の一部である三畳間の床板約一尺四方、ならびに押入の床板および上段の各約三尺四方を焼くに至った。原審は、この事実を現住建造物等放火罪の既遂として認定したが、被告人側は事実誤認等を理由に上告した。
あてはめ
本件において、被告人の放火による火は、媒介物を離れて家屋の一部である三畳間や押入の床板に燃え移っている。これらの部分は家屋の重要な構成部分であり、判示程度の範囲が焼失した以上、火が媒介物を離れて建造物本体に燃え移り、独立して燃焼する程度に達したものと認められる。したがって、当該家屋は「焼燬」されたものと判断される。
結論
被告人の行為は、現に人が居住する建造物を焼燬したものとして、現住建造物等放火罪の既遂が成立する。上告棄却。
実務上の射程
放火罪の既遂時期に関するリーディングケースである。答案では、単に「燃えた」とするのではなく、「媒介物を離れ」「独立して燃焼」というキーワードを明示して、目的物のどの程度の範囲が焼損したかという事実を摘示し、既遂を導く必要がある。建造物の一部であっても、主要構造部(壁、柱、天井、床等)が独立して燃焼すれば既遂となる。
事件番号: 昭和23(れ)707 / 裁判年月日: 昭和23年11月2日 / 結論: 棄却
一 現行刑事訴訟法における控訴審は覆審であつて、訴訟手續の全部を更新するのであるから、第一審の訴訟手續についてたとえ所論のような違法(辯護人に關する公判調書の誤記及び辯護人に對し公判期日を通知しなかつたこと)があつたとしても、その違法は控訴審の判決に影響を及ぼすものではない。 二 所論のような違法は第一審の訴訟手續を違…