判旨
上告趣意書の差出最終日の通知が適法になされていないにもかかわらず、期間経過を理由に上告を棄却した決定は、手続上の瑕疵が決定に影響を及ぼすことが明らかであるため、これを取り消すべきである。
問題の所在(論点)
上告趣意書差出最終日の指定通知が不適法であったにもかかわらず、提出期間経過を理由としてなされた上告棄却決定(刑訴法386条1項1号準用)の効力。
規範
上告趣意書の差出最終日の指定通知が適法に送達されていない場合、被告人は適法な提出期間を了知し得ない。このような手続上の瑕疵が存在し、それが決定に影響を及ぼすことが明らかであるときは、刑訴法414条、386条2項等の規定により、既になされた棄却決定を取り消し、改めて適法な最終日を指定し直すべきである。
重要事実
最高裁判所は、被告人の上告について昭和42年12月25日を上告趣意書差出最終日と指定した。被告人が期間内に趣意書を提出しなかったため、裁判所は昭和43年1月18日に上告棄却決定を下した。しかし、実際には通知書の送達に手違いがあり、被告人に対して適法な通知がなされていなかったことが判明した。
あてはめ
本件では、上告趣意書の差出最終日の指定に関する通知書の送達に不備があり、被告人に対して適法な通知がなされていなかった。このことは、被告人に弁護の機会を実質的に保障する手続の前提を欠くものであり、上告棄却決定の根拠となった「期間内の不提出」という事実に重大な瑕疵を生じさせている。したがって、当該瑕疵は原決定に影響を及ぼすことが明らかであるといえる。
結論
原決定を取り消し、改めて上告趣意書差出最終日を指定する。
実務上の射程
事件番号: 昭和51(す)17 / 裁判年月日: 昭和51年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告棄却の決定に対する異議の申立において、具体的な理由が付されず、かつ異議申立期間内に理由書の提出もない場合には、当該申立は不適法として棄却される。 第1 事案の概要:被告人は暴力行為等処罰に関する法律違反の罪に問われ、最高裁判所により上告棄却の決定を受けた。これに対し、弁護人が異議の申立を行った…
訴訟手続の根幹に関わる告知・送達の瑕疵がある場合、確定前の決定であれば裁判所自らこれを取り消し、適正な手続をやり直すべきであるという手続正義の要請を示す事案である。答案上は、不変期間の起算点となる通知の適法性を検討する際の論拠となる。
事件番号: 昭和38(す)203 / 裁判年月日: 昭和38年9月10日 / 結論: その他
当裁判所は被告人の上告申立にかかる昭和三八年(あ)第八三九号道路交通法違反等被告事件について、上告趣意書最終提出日を指定し、その通知書を、郵便により、記録上被告人の住居と認められる京都市a区b町(新町名c町)d番地あてに送達したとおろ、送達報告書によると、被告人の雇人である甲が前記場所において右通知書を受領したことによ…
事件番号: 昭和42(す)343 / 裁判年月日: 昭和42年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所の上告棄却決定に対する異議申立てにおいて、申立てに理由がない場合、または申立期間を経過した不適法なものである場合は、いずれも棄却される。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、傷害、逮捕、恐喝等の罪に問われ、最高裁判所(昭和41年(あ)第2544号)により上告棄却の決定を受けた。これに対…
事件番号: 昭和56(す)128 / 裁判年月日: 昭和56年8月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意書の差出最終日が指定された後に選任された弁護人に対しては、裁判所は改めて差出最終日の通知をする義務を負わない。 第1 事案の概要:暴行被告事件において、最高裁判所が上告趣意書の差出最終日を指定した。その後、弁護人が選任されたが、裁判所は新しく選任された弁護人に対して差出最終日の通知を行わな…
事件番号: 昭和28(す)23 / 裁判年月日: 昭和28年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が上告趣意書の不提出を理由としてした上告棄却決定に対し、異議の申立てを許す規定は存在しないため、かかる申立ては不適法である。 第1 事案の概要:上告人(被告人)は、最高裁判所に上告を申し立てた。しかし、被告人及び弁護人は、刑事訴訟法414条、376条、刑事訴訟規則等の規定に基づき定められ…