当裁判所は被告人の上告申立にかかる昭和三八年(あ)第八三九号道路交通法違反等被告事件について、上告趣意書最終提出日を指定し、その通知書を、郵便により、記録上被告人の住居と認められる京都市a区b町(新町名c町)d番地あてに送達したとおろ、送達報告書によると、被告人の雇人である甲が前記場所において右通知書を受領したことによりその送達を終つたことが窺われる。ところが、当裁判所の照会の結果、a郵便局の回答書により、右送達の当時被告人は既に他に転居していて前記場所に住居を有せずその受領者である甲は被告人の雇人、事務員、同居者のいずれでもなかつたこと及び右通知書が甲から被告人に交付されたかどうかも疑わしいことが明らかになつた。しがつて、被告人に対する右通知書の送達は有効になされていなかつたものといわざるをえない。当裁判所は、被告人が上告趣意書を指定の期間内に提出しなかつたことを理由として上告を棄却したのであるが、右のように被告人に対する上告趣意書最終提出日の通知が有効になされていなかつた以上、その瑕疵は原決定に影響すること明らかであり、原決定を取消すべきものと認める。
記録上の住居にあててなされた上告趣意書最終提出日の通知が無効とされ、意義申立が容れられた事例。
刑訴法54条,刑訴法414条,刑訴法376条,刑訴法386条1項1号,刑訴法386条2項,刑訴法385条2項,刑訴法422条,刑訴法428条2項,刑訴法426条2項,刑訴規則62条,刑訴規則63条,刑訴規則266条,刑訴規則236条
判旨
上告趣意書の最終提出日の通知が、被告人の転居により住居を有しない場所において、雇用関係等のない者に送達された場合、その送達は無効である。送達の瑕疵は上告棄却決定の効力に影響を及ぼすため、当該決定を取り消し、改めて提出期限を指定すべきである。
問題の所在(論点)
上告趣意書提出期限の通知が、被告人と無関係な者によって住居でない場所で受領された場合、その送達は有効か。また、不適法な送達を前提になされた上告棄却決定(刑訴法386条1項1号)の効力はどうなるか。
規範
上告趣意書の提出期限の通知は、被告人の住居等に対して適法な送達がなされることを要する。被告人と雇用関係、事務員又は同居者の関係にない者が受領した場合や、送達時に被告人が当該場所に住居を有していない場合には、送達の効力は認められず、これを前提とした上告棄却決定は取り消されるべきである。
事件番号: 昭和43(す)13 / 裁判年月日: 昭和43年2月15日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】上告趣意書の差出最終日の通知が適法になされていないにもかかわらず、期間経過を理由に上告を棄却した決定は、手続上の瑕疵が決定に影響を及ぼすことが明らかであるため、これを取り消すべきである。 第1 事案の概要:最高裁判所は、被告人の上告について昭和42年12月25日を上告趣意書差出最終日と指定した。被…
重要事実
裁判所は、被告人の住居と認められる場所あてに上告趣意書最終提出日の通知を郵送し、受領者Aが「雇人」として受領した。しかし、後の調査により、送達当時、被告人は既に転居しており当該場所に住居を有していなかったこと、受領者Aは被告人の雇人、事務員、同居者のいずれでもなかったこと、及びAから被告人へ通知書が交付されたかも疑わしいことが判明した。
あてはめ
本件では、送達場所が既に被告人の住居ではなく、受領者Aも補充送達(刑訴法54条、民訴法106条参照)を受け得る「同居者・使用人等」に該当しない。したがって、通知書の送達は有効になされたとはいえない。この送達の瑕疵は、期間内に趣意書が提出されないことを理由とする上告棄却決定の前提を欠くものであり、決定の結果に影響を及ぼすことは明らかである。
結論
被告人に対する通知の送達は無効であり、これを前提とした上告棄却決定は取り消される。裁判所は、刑訴法414条等に基づき、新たに上告趣意書の最終提出日を指定し直すべきである。
実務上の射程
送達の適法性が上告維持の前提となることを示した事例。刑事訴訟における送達の不備(特に住居喪失や補充送達の受領権限)が、手続の根幹に関わる重大な瑕疵となり、一度なされた終局的な決定(棄却決定)をも取り消し得る事由になることを確認する際に活用できる。
事件番号: 昭和43(し)38 / 裁判年月日: 昭和43年9月17日 / 結論: その他
本件のような事情(決定文参照)のもとにおいては、控訴趣意書不提出による控訴棄却決定に対する異議申立を受けた原裁判所としては、当該郵便送達報告書の記載内容に疑いの余地があるから、申立人に控訴趣意書差出最終日通知書が送達されたかどうかを判断するには、なお、関係者の取調等事実の取調を必要とすると認められるのに、原裁判所が、事…
事件番号: 昭和50(す)39 / 裁判年月日: 昭和50年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法414条、386条1項3号により上告を棄却した最高裁判所の決定に対し、同法415条に基づく訂正の申立てをすることは許されない。 第1 事案の概要:最高裁判所は、被告人の上告に対し、刑事訴訟法414条、386条1項3号の規定を適用して上告棄却の決定を下した。これに対し、申立人は判決の訂正を…
事件番号: 昭和57(す)156 / 裁判年月日: 昭和57年8月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】電報は刑事訴訟法423条に規定される「申立書」には該当せず、電報による異議の申立ては不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、最高裁判所がした上告棄却の決定に対し、特別抗告をする旨の電報を送付した。裁判所は、これを決定に対する異議の申立てと解した上で、電報が申立書に該当するかを判断した。 第2 …
事件番号: 昭和57(し)137 / 裁判年月日: 昭和58年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】必要的弁護事件において、裁判所は、控訴申立をした第一審弁護人及び控訴趣意書差出最終日の指定後に選任された弁護人に対しては、当該最終日の通知を行うことを要しない。 第1 事案の概要:本件は、必要的弁護事件において、弁護人が控訴趣意書の差出最終日の通知がなされなかったことを不服として異議を申し立てた事…