本件のような事情(決定文参照)のもとにおいては、控訴趣意書不提出による控訴棄却決定に対する異議申立を受けた原裁判所としては、当該郵便送達報告書の記載内容に疑いの余地があるから、申立人に控訴趣意書差出最終日通知書が送達されたかどうかを判断するには、なお、関係者の取調等事実の取調を必要とすると認められるのに、原裁判所が、事実の取調を行なうことなく、記録上控訴趣意書差出最終日通知書は適式に申立人に送達されていると認定して、異議申立を棄却する決定をしたのは、審理不尽の違法があり、刑訴法第四一一条第一項第一号により取消を免れない。
控訴趣意書不提出を理由とする控訴棄却決定に対する異議申立棄却決定が審理不尽の違法があるとして取り消された事例
刑訴法54条,刑訴法386条,刑訴法411条1号,刑訴法433条
判旨
郵便送達報告書に記載がある場合でも、送達されたとする書類の内容に疑いの余地があるときは、関係者の取調等の事実取調を行うことなく直ちに送達を認めることは審理不尽として許されない。
問題の所在(論点)
郵便送達報告書に送達書類の名称が記載されている場合において、被告人が一部書類の同封漏れを主張したとき、裁判所は事実取調を行うことなく送達の事実を認定できるか(送達認定における審理不尽の有無)。
規範
郵便送達報告書の記載は、原則として送達の事実を証明する資料となるが、記載された送達書類の内容について疑いの余地が生じている場合には、裁判所は直ちにその記載を信ぜず、関係者の取調等の事実取調を行い、送達の成否を実質的に判断しなければならない。
重要事実
被告人が道路交通法違反で有罪判決を受け、控訴した事案。裁判所書記官は、控訴趣意書差出最終日通知書を含む計4通の書類を同封して特別送達したとされ、郵便送達報告書にもその旨の記載があった。しかし、被告人は、通知書のみが同封されていなかったとして、控訴棄却決定に対し異議を申し立てた。原審は、郵便送達報告書の記載のみを根拠に、何ら事実取調を行わず異議を棄却した。
事件番号: 昭和47(し)91 / 裁判年月日: 昭和47年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告において、期限後に提出された理由の追加補充については、裁判所は判断を加える必要がない。 第1 事案の概要:抗告人が、憲法37条違反および判例違反を理由として特別抗告を提起した事案。抗告人は、抗告提起後、昭和47年11月15日付で特別抗告の理由の追加補充を提出したが、これは提出期限を過ぎたも…
あてはめ
本件では、被告人が受領時に自ら内容を確認して押印したかが不明であり、かつ裁判所職員が書類を同封し忘れる可能性も否定できない。被告人が「通知書のみを受け取っていない」と具体的に主張している以上、送達されたとされる書類の内容には疑いの余地がある。それにもかかわらず、原審が関係者の取調等の事実取調を一切行わず、報告書の記載のみで適式な送達を認めたことは、審理不尽の違法があると言わざるを得ない。
結論
原決定には審理不尽の違法があり、事実取調をさせるため、原決定を取り消し、本件を原裁判所に差し戻すべきである。
実務上の射程
送達の効力が控訴権等の手続的保障に直結する場面で、送達報告書の形式的な証明力に疑義が生じた際の事実認定の在り方を示す。答案上は、当事者が送達を争っている場合の裁判所の事実確認義務を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和27(し)90 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】送達報告書により控訴趣意書提出最終日の通知書が適法に送達された事実が認められる場合、通知を受けていないことを前提とする憲法32条違反の主張は採用されない。 第1 事案の概要:申立人は、麻薬取締法違反等被告事件において、控訴趣意書の提出最終日の通知書を受け取っていないと主張し、裁判を受ける権利(憲法…
事件番号: 昭和53(し)43 / 裁判年月日: 昭和53年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告において、抗告申立書に具体的な理由の記載がなく、かつ抗告期間内に理由書が提出されない場合には、申立は不適法として棄却される。 第1 事案の概要:申立人らは、原決定に対し特別抗告を申し立てた。申立書には「抗告理由の詳細は近く抗告理由書を提出するが、要するに刑訴法405条、411条所定事由を理…
事件番号: 昭和46(し)94 / 裁判年月日: 昭和46年11月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不服申立に対する却下決定に対し特別抗告を申し立てる場合、その理由は当該却下決定自体の憲法違反等でなければならず、前審の判断内容を争う事由は不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、管轄移送申立を却下する決定に対し即時抗告をしたが、これも棄却された。当該棄却決定は申立人に送達され、これに対して直接…
事件番号: 昭和57(す)156 / 裁判年月日: 昭和57年8月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】電報は刑事訴訟法423条に規定される「申立書」には該当せず、電報による異議の申立ては不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、最高裁判所がした上告棄却の決定に対し、特別抗告をする旨の電報を送付した。裁判所は、これを決定に対する異議の申立てと解した上で、電報が申立書に該当するかを判断した。 第2 …