所論は、憲法第一四条違反をいうが、原決定は、証拠隠滅のおそれの有無の判断にあたつて、被告人その他の事件関係者の多くが、暴力団関係者あるいはこれと交渉のある者であるということを考慮しているだけで、被告人を暴力団関係者として他の者と差別し、不平等な取扱いをしているわけではないから、前提を欠き、適法な抗告理由にあたらない。
憲法第一四条にいう社会的身分による差別的取扱いをしたものではないとされた事例
憲法14条
判旨
憲法37条1項の公平な裁判所とは、構成等において偏頗のおそれのない裁判所を意味し、被告人と事件関係者の多くが暴力団関係者であることを罪証隠滅のおそれの判断に考慮することは法の下の平等に反しない。
問題の所在(論点)
1. 被告人に不利益な判断がなされた場合、憲法37条1項の「公平な裁判所」に反するか。 2. 罪証隠滅のおそれの判断において、被告人らが暴力団関係者であることを考慮することは、憲法14条の法の下の平等に反するか。
規範
1. 憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、裁判所の構成その他において、偏頗のおそれのない裁判所を意味する。したがって、事案の審理において被告人に不利益な事実認定や法律判断がなされたとしても、直ちに公平な裁判所による裁判を否定するものではない。 2. 罪証隠滅のおそれの有無を判断するにあたり、事件関係者の属性(暴力団関係者であること等)を考慮することは、直ちに特定の属性に基づく不当な差別(憲法14条違反)には当たらない。
重要事実
被告人が勾留等に関連する手続において、原決定が「罪証隠滅のおそれ」を判断する際、被告人および多くの事件関係者が暴力団関係者、あるいは暴力団と交渉のある者であるという事実を考慮した。これに対し、弁護人は「公平な裁判所」の欠如や、暴力団関係者であることを理由とした不当な差別(憲法14条違反)を主張して抗告した。
事件番号: 昭和24(つ)93 / 裁判年月日: 昭和25年3月6日 / 結論: 棄却
所論は裁判長の被告人に對する個々の尋問に對する被告人の供述が他の共同被告人に不利益であつたにもかかわらず、裁判長がその都度當該他の共同被告人に反對訊問するように注意しなかつた措置又はその共同被告人又は辯護人に對しその都度現實に反對尋問する機會を與えなかつた措置は被告人の證人に對する基本的權利を規定した憲法第三七條第二項…
あてはめ
1. 憲法37条1項の趣旨は裁判所の客観的・中立的な構成を保障する点にある。本件において、事実認定や法律判断の内容が被告人に不利益であっても、裁判所の構成自体に偏頗の客観的な恐れがない限り、同条項には違反しない。 2. 原決定は、罪証隠滅の具体的可能性を検討する上で、関係者の人間関係や社会的属性(暴力団関係者であること)という客観的事実を考慮の要素としたに過ぎない。これは事案の性質に応じた合理的な判断の過程であり、特定の属性を理由に被告人を一律に差別的に取り扱ったものではないため、憲法14条違反の前提を欠く。
結論
本件抗告を棄却する。原決定の判断手法は憲法37条1項、14条、34条、38条2項等のいずれにも違反しない。
実務上の射程
憲法37条1項の「公平な裁判所」の定義(構成・偏頗のおそれ)を引用する際の重要判例である。また、刑事手続(勾留や保釈)における「罪証隠滅のおそれ」の判断において、組織的背景等の属性を考慮することの合憲性を示す根拠として活用できる。
事件番号: 昭和53(し)11 / 裁判年月日: 昭和53年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告事件の審理を担当する裁判官が、当該事件に関する準抗告の裁判に裁判長として関与したという事実のみでは、直ちに憲法37条1項にいう「不公平な裁判所」にあたるとはいえない。 第1 事案の概要:被告事件の審理を担当している裁判官が、当該事件に関連して提起された準抗告の裁判に、裁判長裁判官として関与した…
事件番号: 昭和43(し)102 / 裁判年月日: 昭和43年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官について不公平な裁判をするおそれがあるとは認められないとした原決定の判断に違法はない。したがって、不公平な裁判官を忌避できなかったとする憲法37条1項違反の主張は前提を欠き、抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:被告人が、担当の3名の裁判官について「不公平な裁判をするおそれがある」として…
事件番号: 昭和47(し)77 / 裁判年月日: 昭和47年10月13日 / 結論: 棄却
被告人に対する恐喝事件の受訴裁判所の裁判官として被告人に対する勾留更新決定を行ない、また保釈請求却下決定を行なつた裁判官が、その後右事件につき合議体で審理する旨の決定がなされ、右事件を審理する合議体の構成員になつたことは所論の通りであるが、そのために同裁判官が職務から除斥されることがないことは勿論、忌避の理由があるもの…
事件番号: 昭和37(し)29 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 棄却
憲法三七条二項は、刑事被告人に対し、受訴裁判所の訴訟手続において、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられる旨を規定したものであること当裁判所の判例(昭和二四年(つ)第九三号同二五年三月六日大法廷決定刑集四巻三号三〇九頁、昭和二五年(あ)第七九七号同二七年六月一八日大法廷判決刑集六巻六号八〇一頁)である。しから…