在監者の上訴申立に関する刑訴法第三六六条第一項は、いわゆる審判請求事件についてされた抗告棄却の決定に対し、右請求をした在監者が特別抗告の申立書を差し出す場合には準用ないし類推適用されないものと解すべきである。
刑訴法第三六六条第一項はいわゆる審判請求事件についてされた抗告棄却の決定に対し在監者が特別抗告申立書を差し出す場合に準用されるか
刑訴法366条1項,刑訴法262条1項,刑訴法433条
判旨
付審判請求事件の申立棄却決定に対する特別抗告において、在監者が上訴申立書を監獄の長等に提出した時に上訴があったとみなす刑事訴訟法366条1項の規定は準用・類推適用されない。
問題の所在(論点)
付審判請求事件の棄却決定に対する特別抗告において、在監者が申立期間内に監獄の係官に申立書を提出した場合、刑事訴訟法366条1項(特則)を準用し、期間内に適法に申し立てられたものとみなすことができるか。
規範
刑事訴訟法366条1項(在監者の上訴)の規定は、刑事上の処分を受けた本人の救済を直接の目的とする本来の刑事被告事件の上訴手続に適用されるものである。付審判請求事件の不服申立手続は、告訴・告発人が検察官の不起訴処分を争うものであり、被告事件の上訴とはその性質を異にするため、同条項の準用ないし類推適用は認められない。
重要事実
申立人は、付審判請求を棄却する決定に対し、特別抗告を申し立てようとした。申立人は、抗告期間(刑事訴訟法433条2項の5日間)の最終日である昭和43年10月4日に、熊本刑務所の係官に本件申立書を手交した。しかし、原裁判所が当該申立書を受け付けたのは、期間経過後の同年10月7日であった。
事件番号: 昭和43(し)71 / 裁判年月日: 昭和43年10月31日 / 結論: 棄却
在監者の上訴申立に関する刑訴法第三六六条第一項は、いわゆる審判請求事件についてされた抗告棄却の決定に対し、右請求をした在監者が特別抗告の申立書を差し出す場合には準用ないし類推適用されないものと解すべきである。
あてはめ
付審判請求は、公務員の職権濫用罪等の告訴・告発人が検察官の不起訴処分に不服がある際に行う手続であり、国家刑罰権の適正な行使を目的とする。これは被告人自身の防御を目的とする被告事件の上訴とは性質が異なる。本件において、申立人が監獄係官に書類を手交した事実は認められるものの、同条項の適用がない以上、裁判所に書類が到達した10月7日を基準とすべきである。したがって、法定の5日の期間を経過した後の申立てといえる。
結論
本件抗告は、刑事訴訟法433条2項に定める期間経過後の申立てであり、不適法として棄却される。
実務上の射程
在監者の特則(366条)の適用範囲を限定した判例である。司法試験においては、公訴提起後の「被告人」等の救済手続と、付審判請求のような「告訴・告発人」側の手続を区別し、文言上準用がない場合の類推適用の可否を判断する際の指標となる。
事件番号: 昭和54(し)88 / 裁判年月日: 昭和54年9月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】在監者が付審判請求事件の決定に対して特別抗告を申し立てる場合、刑事訴訟法366条1項(特則としての在監者主義)は準用ないし類推適用されない。したがって、抗告期間内に申立書を監獄官吏に提出しても、期間内に裁判所に受理されなければ申立ては不適法となる。 第1 事案の概要:申立人は、付審判請求事件の決定…
事件番号: 昭和45(し)58 / 裁判年月日: 昭和45年9月4日 / 結論: 棄却
在監者の上訴申立に関する刑訴法三六六条一項は、付審判請求事件の特別抗告申立には準用ないし類推適用されない。 (注)同旨の第一小法廷決定がある(昭和四三年(し)第八五号、同年一一月一三日決定、裁判集一六九号三六七頁)。
事件番号: 昭和56(し)52 / 裁判年月日: 昭和56年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求事件の特別抗告において、在監者が上訴申立書を監獄の長又はその代理者に差し出した時に上訴の提起があったものとみなす刑事訴訟法366条1項(在監者特則)は、準用ないし類推適用されない。 第1 事案の概要:申立人は付審判請求事件の特別抗告を申し立てようとした在監者である。抗告期間の最終日である…
事件番号: 昭和45(し)99 / 裁判年月日: 昭和45年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求事件の申立棄却決定に対する特別抗告において、在監者が抗告期間内に申立書を監獄の長等に差し出したとしても、刑事訴訟法366条1項のいわゆる在監者特則は準用ないし類推適用されない。 第1 事案の概要:付審判請求を行った申立人は、その請求を棄却する決定を受けたため、特別抗告を申し立てようとした…