記録を調べてみると、申立人が本件被疑事実につき福島地方検察庁に告訴した当時すでに公訴時効の完成していたことが明らかであるから、同検察庁検察官森山英一が右被疑事実につき公訴を提起しない旨の処分をしたのは相当であるとした原決定の判断は相当であり、右被疑事実の内容である副検事による公訴提起が違憲であるかどうかの点について判断してみたところで、原決定の右判断になんら影響を及ぼすものではないから、所論違憲の主張は判断の実益を欠き、刑訴法第四三三条の抗告理由にあたらない。
いわゆる審判請求事件につき違憲の主張が判断の実益を欠くから適法な特別抗告理由にあたらないとされた事例
刑訴法433条,刑訴法262条,刑訴法250条
判旨
告訴の時点で既に公訴時効が完成していることが明らかな被疑事実について、検察官が公訴を提起しない旨の処分をしたことは相当である。被疑事実自体の違憲性を判断する実益はなく、刑訴法433条の抗告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
告訴の時点で公訴時効が完成している被疑事実に対し、検察官が不起訴処分とした判断の適否。および、公訴時効が完成している場合に、被疑事実の憲法適合性を判断する必要があるか。
規範
検察官による不起訴処分の妥当性は、公訴提起の前提条件である公訴時効の成否を基準に判断される。公訴時効が既に完成していることが明らかな場合、被疑事実の適法性や違憲性等の実体的な問題に立ち入るまでもなく、不起訴処分は適法かつ相当とされる。
重要事実
申立人は、副検事による公訴提起が違憲であること等を内容とする被疑事実につき、福島地方検察庁に告訴した。しかし、当該告訴がなされた当時、既に当該被疑事実についての公訴時効は完成していた。担当検察官は、当該事実に基づき公訴を提起しない旨の処分(不起訴処分)を行った。
事件番号: 昭和63(し)79 / 裁判年月日: 昭和63年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求に係る被疑事実について公訴時効が完成している場合には、付審判請求を棄却すべきである。 第1 事案の概要:申立人は、被疑事実について付審判請求を行ったが、記録によれば当該被疑事実については昭和62年5月9日の経過をもって公訴時効が完成していた。原決定はこの公訴時効の完成を理由に請求を棄却し…
あてはめ
本件において、申立人が告訴を行った時点ですでに公訴時効が完成していたことは記録上明らかである。公訴時効が完成している以上、検察官が公訴を提起することは法的に不可能であり、公訴を提起しない旨の処分を選択したことは当然の帰結として相当である。また、被疑事実の内容(副検事による公訴提起)が違憲であるか否かという実体的な主張についても、時効完成という形式的・手続的な障害が存在する以上、その判断が結論に影響を及ぼすことはなく、判断の実益を欠くといえる。
結論
公訴時効が完成している被疑事実について不起訴処分とした判断は相当であり、実体上の違憲主張は判断の実益を欠くため、抗告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法433条の特別抗告において、前提となる公訴時効の完成が明らかな場合には、実体的な違憲主張は判断の実益を欠くとする判断枠組み。検察官の不起訴処分の正当性を争う場面において、時効等の訴訟条件の欠缺が優先的に考慮されることを示している。
事件番号: 昭和43(し)25 / 裁判年月日: 昭和43年5月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法433条に基づく特別抗告において、憲法違反を主張する場合には、原決定のいかなる点がどのように憲法条項に違反するかを具体的に主張しなければならず、抽象的な主張に留まるものは適法な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:申立人は、自身が告訴した公務員職権濫用被疑事件について検察官がなした不…
事件番号: 昭和43(し)34 / 裁判年月日: 昭和43年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法433条に基づく特別抗告において、実質的に単なる訴訟法違反を主張するものは、同条所定の抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人が刑事訴訟法433条に基づき特別抗告を申し立てた事案。抗告人はその理由として憲法違反を主張していたが、その主張の実質は訴訟法違反を指摘するものであった。…
事件番号: 昭和41(し)43 / 裁判年月日: 昭和41年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公訴棄却を求める申立ては裁判所の職権発動を促すものにすぎず、却下決定に対しては終局裁判に対する上訴によって不服を申し立てるべきであるから、特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:申立人が、裁判所に対し公訴棄却を求める申立てを行ったところ、裁判所がこれを却下する旨の決定をした。これに対し、申…
事件番号: 昭和40(し)82 / 裁判年月日: 昭和40年11月27日 / 結論: 棄却
申立人提出の昭和四〇年一〇月二二日付「回答」と題する書面によれば、抗告理由の追加記載が認められるけれども、右は抗告提起期間経過後提出にかかる不適法なものにつき、これに対しては判断を要しない。(昭和三四年(し)第一四号同年四月一三日第三小法廷決定、刑集一三巻四号四四八頁参照。)