判旨
憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、裁判所の組織・構成上において不公平となるおそれがない裁判所を指し、裁判の迅速性の欠如は直ちに同条違反による裁判の効力喪失を意味しない。
問題の所在(論点)
憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」の意義、および裁判の迅速性が欠けた場合における裁判の効力への影響が問題となった。
規範
憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、裁判所の組織・構成において不公平のおそれがないことを意味する。また、裁判に迅速性が欠ける場合であっても、それが当然に裁判の効力に影響を及ぼすものではない。
重要事実
申立人は、自身が納付した保釈保証金の没取手続に関し、憲法32条(裁判を受ける権利)および憲法37条1項(公平な裁判所の迅速な公開裁判)に違反すると主張して抗告を行った。しかし、本件の訴訟記録上、不公正な組織による裁判や基本的人権の侵害を認めるべき事情は存在しなかった。
あてはめ
本件において申立人が受けている裁判は、法律に定められた適法な裁判所によるものであり、その組織・構成において不公平のおそれがあるとは認められない。また、仮に迅速性の点において疑義が生じたとしても、先行する大法廷判例の趣旨に照らせば、それは直ちに裁判の効力を左右する事由とは評価されない。したがって、憲法32条および37条1項への抵触は認められない。
結論
本件抗告は理由がなく、棄却されるべきである。
実務上の射程
憲法37条1項の「公平な裁判所」の定義(組織・構成の適正)を示す基礎的な判例である。迅速な裁判の保障に関する議論において、その遅延が実体判決の効力にどう影響するか(免訴の可否等)を論ずる際の前提として、憲法の保障範囲を画定するために用いられる。
事件番号: 昭和43(し)9 / 裁判年月日: 昭和43年7月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈保証金没取決定(刑訴法96条2項)をするに際し、被告人または弁護人に陳述の機会を与えないことは、憲法29条および31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が保釈中に逃走または召喚に応じなかった等の事情(詳細は判決文からは不明)により、第一審裁判所が刑訴法96条2項に基づき保釈保証金の没取を…
事件番号: 昭和49(し)40 / 裁判年月日: 昭和49年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条違反の主張が、原裁判所による記録精査の欠如という事実を前提とする場合、その前提事実が認められない限りは適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人が、原裁判所が記録を精査することなく異議申立てを棄却したと主張し、これを前提として憲法37条違反を訴え、本件抗告に至った。しかし、…
事件番号: 昭和25(し)66 / 裁判年月日: 昭和26年5月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、裁判所の組織構成において偏頗の恐れがないことを意味し、個別の事件で被告人に不利益な裁判がなされたことのみをもって直ちに同条項違反とはならない。 第1 事案の概要:被告人は恐喝等被告事件において保釈を許可されていたが、前橋地方裁判所太田支部は、被告人が保…
事件番号: 昭和32(し)51 / 裁判年月日: 昭和33年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所が抗告裁判所としてした決定に対しては、刑事訴訟法428条2項に基づく異議の申立てをすることはできない。したがって、かかる決定に対してなされた異議申立てを不適法として棄却した原決定に憲法違反の違法はない。 第1 事案の概要:申立人は、大阪地方裁判所による保釈保証金没取決定に対し、大阪高等裁…
事件番号: 昭和43(し)40 / 裁判年月日: 昭和43年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈保証金の没取決定において、決定前に告知、弁解、防御の機会が与えられていなくても、事後に抗告による不服申立ての機会が保障されている限り、憲法31条および29条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の保釈保証金について没取決定がなされた。これに対し、被告人側は、決定に先立ってあらかじめ告知、弁解…