判旨
確定した略式命令と同一の公訴事実について重ねて公訴が提起された場合、二重処罰の禁止を定めた憲法及び刑事訴訟法の趣旨に基づき、免訴の言渡しをすべきである。
問題の所在(論点)
すでに確定した略式命令が存在する公訴事実について、重ねて公訴が提起され略式命令が発せられた場合、裁判所はどのような措置を講じるべきか。刑事訴訟法337条1号の適用の可否が問題となる。
規範
確定判決があるときは、同一事件について重ねて公訴を提起することはできず、これに違反して公訴が提起された場合には、刑事訴訟法337条1号により判決で免訴を言い渡さなければならない。この規定は、略式手続による確定した略式命令についても同様に適用される。
重要事実
被告人は、昭和42年8月の業務上過失致死傷罪の公訴事実につき、同年12月に松戸簡易裁判所から罰金2万5,000円の略式命令を受け、翌年1月に確定した。しかし、検察官は同年2月、全く同一の公訴事実について再度松戸簡易裁判所に略式命令を請求した。同裁判所はこれを見逃し、同年3月に同一内容の略式命令を発し、4月に確定した。
あてはめ
本件において、被告人は昭和43年1月12日に確定した略式命令により、すでに当該業務上過失致死傷の事実について処罰を受けている。にもかかわらず、その後に提起された同一事実に基づく公訴を看過して、裁判所が再び同一内容の略式命令を発したことは、一事不再理の原則に反し違法である。このような二重の起訴・処罰は被告人にとって明らかに不利益であるといえる。
結論
確定した略式命令と同一の事実について重ねてなされた公訴提起は違法であり、刑事訴訟法337条1号に基づき免訴を言い渡すべきである。本件の第2の略式命令は破棄され、免訴が言い渡された。
実務上の射程
事件番号: 昭和46(さ)2 / 裁判年月日: 昭和46年4月8日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】既に確定した略式命令と同一の犯罪事実について、重ねて略式命令が発せられた場合、その審判は法令に違反するため、非常上告に基づき後の略式命令を破棄し免訴すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和45年4月16日に発生させた業務上過失傷害の事実について、同年5月27日付の略式命令請求に基づき、同年…
一事不再理の原則が略式命令の確定によっても生じることを確認した事例。実務上、同一事実による二重起訴が判明した場合には、非常上告等の手段により、確定判決による既判力を根拠として免訴(337条1号)を導く際の先例として機能する。
事件番号: 昭和48(さ)2 / 裁判年月日: 昭和48年4月19日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】確定した略式命令と同一の事実について、重ねて略式命令が発せられた場合、後になされた略式命令は刑事訴訟法337条1号に該当し、免訴の裁判をすべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和46年4月1日の無免許運転の事実につき、同年6月24日に略式命令を受け、同年7月13日に確定した。しかし、検察官は…
事件番号: 昭和41(さ)2 / 裁判年月日: 昭和41年5月27日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】既に確定した略式命令と同一の公訴事実について重ねて公訴が提起された場合、裁判所は刑訴法337条1号に基づき、判決で免訴を言い渡さなければならない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和38年11月15日の無免許運転の事実について、同年12月5日に罰金6000円の略式命令が確定した。しかし、その後、検察…
事件番号: 昭和31(さ)5 / 裁判年月日: 昭和31年11月30日 / 結論: 破棄自判
さきに起訴略式命令のあつた犯罪事実と同一の犯罪事実につき、同一簡易裁判所に他の犯罪事実と共にさらに起訴略式命令の請求があつた場合に、その簡易裁判所が右二重起訴の部分について刑訴第三三八条第三号により公訴を棄却することなく、略式命令により他の犯罪事実と併合罪として処断し、さきの略式命令確定後右略式命令が確定したときは、後…