判旨
無期懲役刑は、憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。また、自白以外の補強証拠が存在する場合には、憲法38条3項に違反することなく有罪と認定できる。
問題の所在(論点)
1. 無期懲役刑が憲法36条の禁止する「残虐な刑罰」に該当するか。 2. 自白の任意性が認められる場合において、補強証拠により有罪と認定することが憲法38条3項に抵触するか。
規範
1. 憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、刑罰の内容・性質が人道に反するほど過酷であるものを指すが、無期懲役刑はこれに該当しない。 2. 憲法38条3項の趣旨に鑑み、被告人の自白のみで有罪とされることは禁じられるが、自白を裏付ける客観的事実や供述等の補強証拠が存在する場合には、同条項に違反しない。
重要事実
被告人AおよびBは、刑事事件において無期懲役刑を言い渡された。被告人側は上告審において、①無期懲役刑は憲法36条にいう残虐な刑罰に当たること、②検察官に対する供述調書等に任意性がなく、かつ自白のみによって有罪とされたことは憲法38条1項から3項に違反すること、等を主張して判決の破棄を求めた。
あてはめ
1. 無期懲役刑については、過去の大法廷判決(昭和24年12月21日)の趣旨に照らし、残虐な刑罰には当たらないと解される。 2. 自白の任意性については、記録を精査しても検察官に対する供述調書や第一審公判廷における自白に任意性を疑うべき点は見出されない。また、原判決が引用する一審判決が挙示する証拠によれば、被告人の自白のみで有罪としたものではないことが明らかであり、補強証拠の存在が認められるため、自白のみによる処罰を禁じた憲法38条3項の違反はない。
結論
無期懲役刑は残虐な刑罰にあたらず、また適法な自白と補強証拠に基づいて有罪を認定した原判決は憲法36条および38条に違反しない。
実務上の射程
憲法36条に関する基本判例として、死刑のみならず無期懲役刑も合憲であることを示す際に引用する。刑事訴訟法上の自白法則や補強法則の合憲性を確認する文脈でも利用可能である。
事件番号: 昭和36(あ)2164 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度および控訴審による第一審の無期懲役判決から死刑への変更は、憲法13条、31条、37条1項、39条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人Aに対し、第一審が無期懲役を言い渡した。これに対し検察官が量刑不当を理由に控訴したところ、原審(控訴審)は第一審判決を破棄し、被告人Aに死刑を言い渡した。…
事件番号: 昭和44(あ)1212 / 裁判年月日: 昭和45年3月26日 / 結論: 棄却
検察官が控訴を申し立て第一審判決の刑より重い刑の判決を求めることが憲法三九条に違反しないことは、昭和二四年新(れ)第二二号同二五年九月二七日大法廷判決(刑集四巻九号一八〇五頁)の判示するとおりであり、検察官が死刑の判決を求める場合もその例外とは解されない。