死刑は憲法第二五条に違反しない
死刑は憲法第二五条に違反するか
刑法9条,刑法11条,憲法25条
判旨
死刑制度を定めた刑法の各規定は、憲法9条、13条、25条、36条のいずれにも違反しない。これは過去の大法廷判決の趣旨に照らして明らかである。
問題の所在(論点)
死刑を定めた刑法の規定は、憲法9条(平和主義)、13条(個人の尊重・生命権)、25条(生存権)、および36条(拷問及び残虐な刑罰の禁止)に違反するか。
規範
刑罰としての死刑それ自体は、憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には該当せず、また、公共の福祉による制限の範囲内として憲法13条(生命に対する権利)にも反しない。さらに、生存権を規定する憲法25条や平和主義を定める憲法9条にも抵触するものではない。
重要事実
被告人は死刑を宣告された第一審判決に対し、控訴棄却を経て上告した。弁護人は、死刑を定めた刑法の規定が憲法9条、13条、25条、36条に違反すると主張し、死刑制度そのものの憲法適合性を争った。
あてはめ
最高裁判所は、昭和23年および昭和26年の大法廷判決を引用し、死刑が憲法13条や36条に違反しないことは既に確立された判断であるとした。憲法25条についても、同条1項が国民に対して具体的・現実的な権利を付与するものではないという判例(プログラム規定説的解釈)に基づき、死刑制度が同条に違反しないことは明らかであると判断した。憲法9条違反の主張についても、同様に過去の判例の趣旨から否定される。
結論
死刑を定めた刑法の各規定は憲法に違反しない。したがって、死刑を是認した原判決は正当である。
実務上の射程
死刑制度の合憲性を包括的に肯定した判例である。司法試験においては、死刑制度の是非そのものが問われることは稀だが、憲法13条や36条の限界を論じる際の「確定した前提」として活用できる。特に憲法25条との関係でも合憲性を明示した点に特色がある。
事件番号: 昭和36(あ)2164 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度および控訴審による第一審の無期懲役判決から死刑への変更は、憲法13条、31条、37条1項、39条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人Aに対し、第一審が無期懲役を言い渡した。これに対し検察官が量刑不当を理由に控訴したところ、原審(控訴審)は第一審判決を破棄し、被告人Aに死刑を言い渡した。…
事件番号: 昭和44(あ)1212 / 裁判年月日: 昭和45年3月26日 / 結論: 棄却
検察官が控訴を申し立て第一審判決の刑より重い刑の判決を求めることが憲法三九条に違反しないことは、昭和二四年新(れ)第二二号同二五年九月二七日大法廷判決(刑集四巻九号一八〇五頁)の判示するとおりであり、検察官が死刑の判決を求める場合もその例外とは解されない。