判旨
刑の執行猶予を言い渡すか否かは事実審の裁量に属し、それが経験則に反しない限り、執行猶予を付さなかったとしても違法とはならない。
問題の所在(論点)
刑法25条に基づく執行猶予の付与の有無について、事実審の裁量の範囲および上告審における審査基準が問題となる。
規範
刑の執行猶予を言い渡すか否かは事実審の広範な裁量に属する。したがって、裁量の行使(または不行使)が経験則に反すると認められない限り、適法なものとして是認される。
重要事実
被告人は第一審において懲役三月の実刑判決を言い渡された。これに対し、執行猶予を言い渡さなかったことが不当であるとして上告がなされたが、原判決(控訴審)は第一審の量刑を是認していた。
あてはめ
記録によれば、被告人を懲役三月に処し執行猶予を付さなかった一審判決を維持した原判決の判断において、それが経験則に反すると認められるような事情は存在しない。したがって、裁量の逸脱・濫用があるとはいえず、違法ではないと解される。
結論
執行猶予を言い渡さない判断が経験則に反しない限り、適法である。本件上告は理由がないため棄却される。
実務上の射程
量刑不当は原則として上告理由にならない(刑訴法405条)が、本判決は執行猶予の判断が「経験則に反する場合」には違法となり得る余地を示唆している。実務上、執行猶予の有無を争う際は、裁量権の逸脱を基礎付ける具体的かつ特段の事情(経験則違反)を主張する必要がある。
事件番号: 昭和45(あ)214 / 裁判年月日: 昭和45年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑の資料として前科を勘案することは、前科を一つの情状として考慮するものにすぎず、憲法39条の二重処罰禁止の原則に反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事裁判において有罪判決を受け、その量刑判断に際して、原判決が控訴趣意に対する判断の中で被告人の前科等の量刑資料を勘案すると判示した。これに対し、…