公判調書に、裁判所書記官の署名押印がある以上裁判長もしくは裁判官の認印が欠けていることの一事だけで直ちにこれを無効と解すべきではない(昭和三〇年(あ)第一二〇号同三二年八月二三日第二小法廷判決、刑集一一巻八号二一〇三頁参照)。
裁判長の認印を欠く公判調書の効力。
刑訴法48条,刑訴規則37条,刑訴規則46条
判旨
公判調書において、裁判長または差し支えある場合の他の裁判官の認印が欠けていたとしても、裁判所書記官の署名押印がある限り、直ちにその公判調書を無効と解すべきではない。
問題の所在(論点)
公判調書に裁判長または裁判官の認印が欠けている場合、当該調書は刑事訴訟法上の効力を有するか。また、これが無効となることで判決に影響を及ぼす法令違反となるか。
規範
公判調書の有効性については、刑事訴訟法が定める形式的要件の欠落が直ちに無効をもたらすわけではない。裁判長等の認印が欠けている場合であっても、裁判所書記官による署名押印という調書作成の主体的な真正が担保されているのであれば、当該公判調書は有効なものとして取り扱うことができる。
重要事実
被告人らの刑事事件において、原審(第二審)の第2回公判調書に、裁判長の認印または裁判長に差し支えがある場合の他の裁判官の認印が欠落していた。弁護人は、この手続上の瑕疵を理由に、公判調書の無効およびそれに基づく法令違反等を主張して上告した。
あてはめ
本件における公判調書には、指摘の通り裁判長等の認印が欠けている事実が認められる。しかし、当該調書には裁判所書記官の署名押印がなされている。書記官の署名押印は調書作成の正確性を証する本質的な要素であり、これが備わっている以上、裁判長らの認印が欠けているという一事をもって、直ちに調書全体を無効と判断することは相当ではない。したがって、当該調書の証拠能力や手続的有効性を否定することはできない。
結論
公判調書に裁判長等の認印が欠けていても、裁判所書記官の署名押印がある以上、直ちに無効とはならず、上告理由にはあたらない。
実務上の射程
刑事訴訟法第48条3項等に基づく公判調書の形式的要件に関する判例である。実務上、軽微な形式的不備が公判手続全体の効力に波及するかを判断する際の基準となる。答案上では、書記官の署名押印による真正担保を重視する考え方として、手続の瑕疵と無効の関係を論ずる際に活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)5115 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判調書に弁護人の氏名が遺脱していても、他の記載内容から弁護人の出頭が客観的に認められる場合には、訴訟手続に違法はない。 第1 事案の概要:被告人が控訴した原審の第一回公判において、作成された公判調書に、本来記載されるべき出頭した弁護人の氏名が遺脱していた。しかし、同調書には「弁護人が自己の提出に…