判旨
当審の弁護人として選任されておらず、かつ原審弁護人の資格で自ら上告申し立てを行っていない者が連名で記載した上告趣意書は、適法に選任された弁護人の上告趣意書としてのみ取り扱われる。
問題の所在(論点)
刑訴法上、当審の弁護人として選任されていない者が、適法な弁護人と連名で提出した上告趣意書の有効性、およびその取り扱いが問題となる。
規範
上告趣意書の作成・提出権限は、適法に選任された当審の弁護士、または原審における弁護人の資格で自ら上告申し立てを行った者に限定される。選任手続を経ていない第三者が連名で署名していても、その者の記載部分は独自の有効な上告趣意としては認められない。
重要事実
被告人の弁護人として荒木宏弁護士が選任されていた。上告趣意書には酉井善一弁護士も連名で記載されていたが、酉井弁護士は当審の弁護人として選任されておらず、原審弁護人の資格で自ら上告申し立てをした者でもなかった。
あてはめ
酉井弁護士は当審での弁護人選任を受けていない。また、同人は原審弁護人として自ら上告を申し立てた者でもない。したがって、書面上に名前が連記されていても、同人による独自の主張や適法な上告趣意としての効力を認めることはできない。結果として、当該趣意書は適法な選任を受けている荒木弁護士のみの上告趣意書として取り扱うのが相当である。
結論
非選任の弁護士が連名された上告趣意書は、適法に選任された弁護人の上告趣意書としてのみ取り扱われ、それ自体に不適法な影響を及ぼすものではないが、非選任者による独自の趣意としては認められない。
実務上の射程
弁護人選任の有無という形式的要件を厳格に判断する基準を示す。実務上、共同で書面を作成する場合であっても、各審級における選任届の提出や上告申立権限の有無を確認すべきことを示唆している。
事件番号: 昭和39(あ)2533 / 裁判年月日: 昭和40年9月22日 / 結論: 棄却
本件上告趣意書提出期間内である昭和四〇年一月二〇日被告人の原審弁護人酒井祝成から「上告理由書」と題する書面が提出されているけれども、本件上告は被告人自身により提起されたもので、右原弁護人が提起したものでないことおよび同人を当審における弁護人に選任する旨の弁護人選任届は、遂に提出されていないことを認めることができる。して…
事件番号: 昭和43(あ)2531 / 裁判年月日: 昭和44年9月4日 / 結論: 棄却
第一審判決後被告人の妻によつて選任された弁護人には、被告人のため控訴申立をする権限がない。
事件番号: 昭和44(あ)2182 / 裁判年月日: 昭和45年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】必要的弁護事件でない控訴審において、裁判所が被告人に弁護人選任の機会を十分に与えた上で、公判期日に職権で国選弁護人を選任した措置は、被告人の弁護人選任権(憲法37条3項)を侵害しない。 第1 事案の概要:被告人は、控訴趣意書提出期限の通知とともに弁護人選任の照会を受けた際、自ら選任する旨回答したが…