判旨
一連の暴行の経過において、特定の行為が別個の意思発動に基づくと認められる場合には、全般的観察だけでなく瞬間的部分的な攻防の態様も考慮して、過剰防衛の成否を個別に判断すべきである。
問題の所在(論点)
一連の暴行・防衛の経過において、特定の行為を先行する攻防から切り離し、「別個の意思発動」による行為として過剰防衛等の成否を判断することが許されるか。
規範
正当防衛(刑法36条1項)および過剰防衛(同条2項)の成否において、一連の身体的接触がある場合でも、各行為が「別個の意思発動」によるものであるときは、各段階の行為を切り分けて、それぞれの防衛の意思、急迫不正の侵害の有無、および防衛行為の相当性を判断する。
重要事実
被告人は被害者から再三にわたる執拗な暴行を受けていた。その経過において、被告人は計3回の絞頸行為を行った。原判決は、このうち第3回目の絞頸行為について、それまでの攻防とは独立した「別個の意思発動」に基づく行為であると認定した。
あてはめ
本件では、犯行当日における被害者の執拗な暴行の経過を検討した上で、第3回目の絞頸行為がそれまでの行為と時間的・心理的に連続した一塊の行為ではなく、新たな意思に基づくものと評価されている。このような事実関係の下では、瞬間的部分的な攻防の態様に着目して個別に法的評価を下すことは、全般的観察を怠ったものとはいえず、正当な判断手法である。
結論
第3回目の絞頸行為を別個の意思発動による行為と認めた原判断は正当であり、過剰防衛等の成否に関する上告理由は認められない。
実務上の射程
「一連の行為」か「別個の行為」かの区別(行為の単一性・連続性)が争点となる事案で活用する。特に、防衛行為が執拗に繰り返された結果として侵害が終了した後の行為(過剰防衛または後の侵害)を検討する際の判断枠組みとなる。
事件番号: 昭和33(あ)547 / 裁判年月日: 昭和34年2月5日 / 結論: 棄却
本件のごとく、たとえ当初は急迫不正の侵害に対し防衛行為として巳むことを得ざるに出でたものであつても、最初の一撃によつて相手方の侵害的態勢がくずれ去つた後、引き続きなお追撃的行為に出で相手方を殺傷したような場合は、それ自体が全体としてその際の状況にてらし正当防衛行為とはいえないのであつて、過剰防衛にあたると認めるべきであ…