判旨
第一審と原審の判決において、罰金完納不能時の労役場留置の換算基準に差異がない場合、前提を欠く判例違反の主張は認められない。
問題の所在(論点)
第一審と控訴審で労役場留置の換算基準が同一である場合に、当該基準の差異を前提とする上告趣旨が、刑事訴訟法405条の上告理由(判例違反等)に該当するか。
規範
刑法18条に基づく労役場留置の言渡しにおいて、上訴審が下級審と同一の換算基準(1日当たりの金額)を適用している場合、判例違反や法令違反の主張は、その前提事実を欠くものとして退けられる。
重要事実
被告人に対し、第一審裁判所および原裁判所(控訴審)は、罰金を完納することができないときの留置期間につき、いずれも「金1,000円を1日に換算した期間」とする労役場留置の言渡しを行った。弁護人は、両判決の間に差異があることを前提として、判例違反等を理由に上告を申し立てた。
あてはめ
記録によれば、本件第一審および原裁判所は、共に罰金1,000円を1日に換算する旨の言渡しを行っている。したがって、弁護人が主張するような両判決間の換算基準の差異は存在しない。このように、主張の前提となる事実が認められない以上、判例違反の主張は失当であり、その他の法令違反の主張も刑訴法405条の上告理由に当たらないと解される。
結論
本件上告を棄却する。両審の言渡しに差異はないため、前提を欠く上告理由は認められない。
実務上の射程
本決定は極めて簡短な事案であるが、実務上は、労役場留置の換算基準(刑法18条)の妥当性を争う際、前提となる裁判所の認定事実(換算額)を正確に把握すべきことを示唆している。司法試験においては、不利益変更禁止の原則(刑訴法402条)等との関連で、労役場留置の期間や換算額が変更された場合の評価を検討する際の基礎的な確認事例として機能する。
事件番号: 昭和27(あ)2986 / 裁判年月日: 昭和28年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条の「判例」とは、特定の事案における具体的な量刑理由の判示を指すものではなく、他の事案にも共通して適用されるべき法律的見解を示すものをいう。 第1 事案の概要:被告人が第一審の量刑を不当として控訴したが、原審がこれを棄却したため上告した事案である。弁護人は、名古屋高等裁判所の判決を…