判旨
牽連犯の関係にある手段となる罪と結果となる罪の中間に別罪の確定裁判が介在する場合であっても、刑法54条1項後段の適用が妨げられることはない。
問題の所在(論点)
手段と結果の関係にある二罪の中間に別罪の確定裁判が介在する場合に、刑法54条1項後段(牽連犯)を適用できるか。中間判決の介在が科刑上一罪としての関係を遮断するかが問題となる。
規範
牽連犯(刑法54条1項後段)を構成する手段となる犯罪と結果となる犯罪との間に、これらとは別個の罪について確定裁判が介在する場合であっても、当該手段と結果の罪の間にはなお牽連犯としての関係が認められ、同条の規定が適用される。
重要事実
被告人は、昭和41年10月28日ころに運転免許証を偽造し(判示第一)、その後、昭和42年4月28日に当該偽造免許証を呈示した(判示第二)。この第一の罪と第二の罪の中間である昭和41年11月8日に、別罪(有価証券偽造等)の確定裁判があった。第一審および原審は、中間判決の介在を理由に牽連犯の成立を否定し、第一の罪を確定裁判の余罪(刑法45条後段)として扱い、第二の罪を別個の併合罪として処断した。
あてはめ
最高裁は、先行する大法廷判決(昭和44年6月18日)を引用し、牽連犯を構成する罪の間に別罪の確定裁判が介在していても刑法54条の適用があるとの判断枠組みを示した。本件において、運転免許証の偽造(手段)と行使(結果)は本来牽連犯の関係にある。原審が中間判決の存在のみを理由にこれを併合罪として処断したことは、法令適用の誤りであると解される。
結論
中間判決が介在する場合でも牽連犯は成立する。原判決には法令違反があるが、量刑等の諸般の事情に照らせば、判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められないため、上告を棄却する。
事件番号: 昭和42(あ)2556 / 裁判年月日: 昭和44年7月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】牽連犯(刑法54条1項後段)を構成する「手段」となる犯罪と「結果」となる犯罪の中間に、別罪の確定裁判が介在する場合であっても、なお刑法54条1項後段が適用され、牽連犯が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、昭和42年1月17日ころ、有印公文書である自動車運転免許証1通を偽造した(公文書偽造罪)。…
実務上の射程
罪数論における重要判例である。答案上は、手段と結果の関係にある二罪の間に確定判決がある場合でも、一罪(牽連犯)として扱うべきことを明示するために用いる。ただし、併合罪としてバラバラに処断した場合と牽連犯として一罪で処断した場合で、実際の刑期の範囲に実質的な差が生じない場合には、判決を破棄するまでの事由にならない点にも留意が必要である。
事件番号: 昭和43(あ)1651 / 裁判年月日: 昭和44年6月18日 / 結論: 破棄差戻
一 牽連犯を構成する手段となる犯罪と結果となる犯罪との中間に別罪の確定裁判が介在する場合においても、なお刑法五四条の適用がある。 二 自動車を運転する際に偽造にかかる運転免許証を携帯しているに止まる場合には、偽造公文書行使罪を構成しない。
事件番号: 昭和41(あ)2440 / 裁判年月日: 昭和42年6月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】私文書偽造罪、同行使罪および詐欺罪が順次に手段・結果の関係にある場合、これらは刑法54条1項後段により、一罪(牽連犯)として処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、私文書を偽造し(私文書偽造罪)、これを行使して(同行使罪)、人を欺いて財物を交付させた(詐欺罪)。第一審判決は、私文書偽造罪と…
事件番号: 昭和23(れ)190 / 裁判年月日: 昭和23年5月29日 / 結論: 棄却
一 昭和二二年法律第一二四號(刑法の一部を改正する法律)は刑法第五五條を削除したが同法律附則第四項により同法施行前の行爲については刑法第五五條の改正規定にかかわらずなお從前の例によることを定めておるのである。ところで被告人の本件犯罪行爲は右改正施行の日たる昭和二二年一一月一五日前に行われたものであつて公文書僞造の各所爲…
事件番号: 平成14(さ)1 / 裁判年月日: 平成14年9月26日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】1個の行為が数個の罪名に触れる観念的競合(刑法54条1項前段)において、処断刑の多額は最も重い罪の法定刑によるべきであり、その範囲を超えて科された刑罰は法令違反として破棄される。 第1 事案の概要:被告人は、酒気を帯びた状態で運転免許証を携帯せずに自動車を運転した。原略式命令は、酒気帯び運転(法定…