判旨
牽連犯(刑法54条1項後段)を構成する「手段」となる犯罪と「結果」となる犯罪の中間に、別罪の確定裁判が介在する場合であっても、なお刑法54条1項後段が適用され、牽連犯が成立する。
問題の所在(論点)
牽連犯の関係にある「手段」となる罪(公文書偽造)と「結果」となる罪(偽造公文書行使)の中間に、別罪の確定裁判が介在する場合、牽連犯としての処理が維持されるか、それとも併合罪となるか。
規範
刑法54条1項後段の牽連犯とは、犯罪の手段又は結果である行為が他の罪名に触れる場合をいう。この手段・結果の関係にある複数の罪の間に別罪の確定裁判が介在したとしても、当該関係にある罪同士の法的評価としての牽連性は失われない。したがって、確定裁判の介在を理由に併合罪として処理することはできず、なお牽連犯として処断すべきである。
重要事実
被告人は、昭和42年1月17日ころ、有印公文書である自動車運転免許証1通を偽造した(公文書偽造罪)。その後、同年2月19日に別の道路交通法違反罪による罰金の確定裁判を経た後、同年3月2日に上記偽造免許証を警察官に呈示して行使した(偽造公文書行使罪)。第1審は両罪を牽連犯としたが、原審は、中間にある確定裁判の存在により併合罪(刑法45条後段)にあたるとしてこれを破棄した。
あてはめ
本件における公文書偽造の罪と偽造公文書行使の罪は、本来、手段と結果の関係にあり、牽連犯を構成するものである。昭和44年6月18日の大法廷判決の趣旨に照らせば、これら二罪の中間に別罪の確定裁判が介在したとしても、牽連犯の成立は妨げられない。したがって、中間判決を理由に併合罪として処断した原判決の法令適用には誤りがあるといえる。
結論
牽連犯の関係にある罪の間に確定裁判が介在する場合でも、なお刑法54条1項後段(牽連犯)の適用がある。本件では原判決に法令適用の誤りがあるものの、実質的な量刑に差異がないため、破棄自判までは要せず、上告を棄却する。
事件番号: 昭和43(あ)1139 / 裁判年月日: 昭和44年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】牽連犯の関係にある手段となる罪と結果となる罪の中間に別罪の確定裁判が介在する場合であっても、刑法54条1項後段の適用が妨げられることはない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和41年10月28日ころに運転免許証を偽造し(判示第一)、その後、昭和42年4月28日に当該偽造免許証を呈示した(判示第二)。…
実務上の射程
併合罪(45条)と科刑上一罪(54条)の区別が問われる場面で重要となる。判例は、確定裁判の介在による「併合罪の中断」が生じる場合であっても、法的性質としての牽連関係(手段・結果)は解消されないとする。答案上では、45条後段の適用検討と並行して、54条1項の牽連関係が客観的に認められるかを優先して判断すべき指針となる。
事件番号: 昭和43(あ)1651 / 裁判年月日: 昭和44年6月18日 / 結論: 破棄差戻
一 牽連犯を構成する手段となる犯罪と結果となる犯罪との中間に別罪の確定裁判が介在する場合においても、なお刑法五四条の適用がある。 二 自動車を運転する際に偽造にかかる運転免許証を携帯しているに止まる場合には、偽造公文書行使罪を構成しない。
事件番号: 昭和41(あ)2440 / 裁判年月日: 昭和42年6月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】私文書偽造罪、同行使罪および詐欺罪が順次に手段・結果の関係にある場合、これらは刑法54条1項後段により、一罪(牽連犯)として処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、私文書を偽造し(私文書偽造罪)、これを行使して(同行使罪)、人を欺いて財物を交付させた(詐欺罪)。第一審判決は、私文書偽造罪と…
事件番号: 昭和53(あ)22 / 裁判年月日: 昭和53年6月16日 / 結論: 棄却
判決書自体又は記録に照らし、判決書の記載が単なる表現上の誤りであることが明らかでなく、判決裁判所の意図した記載も一義的に明確でないときは、これを明白な誤記と認めることは許されない。