前に逮捕状の発付があつた同一被疑者に対する再度の逮捕状の発付が、いわゆる逮捕のむしかえしによる逮捕権の濫用と認められないときは、右逮捕状の請求書に刑訴規則第一四二条第一項第八号所定の事項の記載を欠いていても、右の逮捕およびこれにひきつづきなされた勾留は違法ではない。
刑訴規則第一四二条第一項第八号所定の事項の記載を欠いた逮捕状請求書によつて発付された逮捕状による逮捕およびこれにつづく勾留が違法ではないとされた事例
刑訴法199条,刑訴規則142条1項
判旨
同一の犯罪事実に基づく再逮捕が逮捕権の濫用にあたらない場合、逮捕状請求書に刑訴規則142条1項8号所定の事項(再逮捕・再勾留の事実等)の記載を欠いていても、当該逮捕およびそれに続く勾留は違法ではない。
問題の所在(論点)
同一の犯罪事実について再逮捕を行うことが「逮捕権の濫用」として違法となるか。また、逮捕状請求書に刑訴規則142条1項8号所定の事項の記載を欠くことが、逮捕および勾留の適法性にどのような影響を及ぼすか。
規範
同一の犯罪事実について再度逮捕することは、原則として許されない。もっとも、捜査における具体的状況に照らし、いわゆる「逮捕の蒸し返し」による逮捕権の濫用と認められない特段の事情がある場合には、適法に再逮捕を行うことが可能である。この場合、逮捕状請求書に刑訴規則142条1項8号の記載を欠く形式的不備があっても、直ちに当該逮捕を違法とするものではない。
重要事実
被告人は、同一の犯罪事実に基づき、一度目の逮捕に続いて昭和42年9月29日に発付された二度目の逮捕状(本件逮捕状)によって逮捕された。この逮捕状請求書には、刑訴規則142条1項8号が規定する「同一の犯罪事実について前に逮捕状の請求若しくは発付があったときは、その旨及びその理由」等の記載が欠落していた。弁護側は、この手続的瑕疵および再逮捕そのものが逮捕権の濫用であり違法であると主張して抗告した。
事件番号: 昭和48(し)64 / 裁判年月日: 昭和48年8月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官による逮捕状の発付は、裁判所による裁判ではなく裁判官による「裁判外の処分」に当たるが、これに対する準抗告(刑訴法429条1項)等の不服申立の道は法上存しない。 第1 事案の概要:申立人は、賍物収受被疑事件において簡易裁判所裁判官が発付した逮捕状に対し、準抗告を申し立てた。これを受けた原審(地…
あてはめ
本件における捜査の具体的状況を検討すると、二度目の逮捕状による逮捕は「逮捕の蒸し返し」による逮捕権の濫用とは認められない。このように実質的な不当性が認められない以上、逮捕状請求書において刑訴規則142条1項8号所定の事項の記載を欠いていたとしても、その手続的過誤が逮捕手続全体を違法ならしめるほど重大なものとはいえない。したがって、本件逮捕およびこれに引き続く勾留が違法であるとは解されない。
結論
本件逮捕は逮捕権の濫用にあたらず、規則上の記載不備があっても逮捕・勾留は違法ではないため、本件特別抗告を棄却する。
実務上の射程
再逮捕・再勾留の禁止の原則に対する例外的な適法性を認める際の判断枠組みを示す。規則上の記載義務違反という形式的瑕疵があっても、実質的に逮捕権の濫用がなければ逮捕の効力を否定しないという実務上の柔軟な解釈の指針となる。
事件番号: 平成2(し)142 / 裁判年月日: 平成2年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被疑者が勾留中のまま同一の犯罪事実により公判請求(起訴)された場合、起訴前の勾留に関する裁判の取消しを求める不服申立ては、もはや法律上の利益を欠き不適法となる。 第1 事案の概要:申立人は強姦被疑事件について、勾留期間延長の裁判を受けた。これに対し申立人は準抗告を申し立てたが棄却されたため、さらに…
事件番号: 昭和48(し)49 / 裁判年月日: 昭和48年7月24日 / 結論: 棄却
いわゆる逮捕中求令状起訴により勾留がなされた場合において、これに先だつ逮捕手続の当否は起訴後の勾留の効力に何ら影響を及ぼさない。
事件番号: 昭和26(し)71 / 裁判年月日: 昭和28年12月22日 / 結論: 棄却
一 刑訴第二六六条第一号により同法第二六二条第一項のいわゆる審判請求を棄却した決定は、同法第四二〇条の「裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定」にあたらない。 二 刑訴第二六六条第一号によりいわゆる審判請求を棄却した決定に対しては、刑訴第四一九条による抗告をすることができる。
事件番号: 昭和42(し)38 / 裁判年月日: 昭和42年7月22日 / 結論: 棄却
上訴の放棄または取下をした者は、その事件についてさらに上訴をすることができないものとしている刑訴法第三六一条が違憲でないことは、昭和二四年(つ)第九六号同二五年四月二一日大法廷決定(刑集四巻四号六七五頁)の趣旨に徴し明らかである。