起訴前の勾留に関する特別抗告と起訴後におけるその利益
刑訴法433条
判旨
被疑者が勾留中のまま同一の犯罪事実により公判請求(起訴)された場合、起訴前の勾留に関する裁判の取消しを求める不服申立ては、もはや法律上の利益を欠き不適法となる。
問題の所在(論点)
勾留期間延長決定に対する不服申立て(特別抗告)の審理中に、被疑者が同一事実で起訴された場合、当該不服申立ての適否(法律上の利益の有無)が問題となる。
規範
起訴前の身分拘束に関する処分に対する不服申立てについて、その審理中に同一事実で起訴がなされた場合には、被疑者勾留としての性質が終了し被告人勾留へと移行するため、特段の事情がない限り、起訴前の処分を争う法律上の利益は失われる。
重要事実
申立人は強姦被疑事件について、勾留期間延長の裁判を受けた。これに対し申立人は準抗告を申し立てたが棄却されたため、さらに特別抗告を申し立てた。しかし、当該特別抗告の審理中に、申立人は同一の犯罪事実により勾留のまま起訴されるに至った。
あてはめ
本件において、申立人は勾留期間延長決定に対して特別抗告を申し立てているが、その審理の継続中に同一の事実で起訴されたことが明らかである。起訴がなされた以上、身分拘束の根拠は被疑者勾留から被告人勾留へと切り替わっており、現時点において過去の起訴前勾留の延長決定の当否を争うことは、もはや具体的な権利救済に結びつかない。したがって、本件申立ては「法律上の利益を欠く」と評価される。
事件番号: 平成3(し)112 / 裁判年月日: 平成3年10月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留期間延長の裁判に対する不服申立てにおいて、既に被疑者が釈放されている場合には、裁判を取り消すことによる法律上の利益が失われるため、抗告は不適法となる。 第1 事案の概要:申立人は勾留期間延長の裁判を受けたが、その後、平成3年10月15日に釈放された。しかし、申立人は当該勾留期間延長の裁判の取消…
結論
本件特別抗告は、起訴により法律上の利益を欠くに至ったため、不適法として棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法上の「訴えの利益」に関する原則を示すものである。答案上は、勾留延長の違法を理由に準抗告や特別抗告を行う設問において、起訴後の事情が示されている場合に、本案判断に入らず不適法却下(棄却)を導くための論拠として活用する。また、勾留の違法を理由とする国家賠償請求など、別個の法律上の利益がある場合との区別にも留意が必要である。
事件番号: 昭和63(し)66 / 裁判年月日: 昭和63年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴前の勾留の裁判に対する準抗告の申立の利益は、被疑者が同一の犯罪事実により起訴された後は、その身分が被告人へと移行し、身分拘束の根拠が被告人勾留へ切り替わるため失われる。 第1 事案の概要:申立人は、強制猥褻致傷被疑事件について簡易裁判所裁判官がした勾留決定に対し、準抗告を申し立てた。しかし、当…
事件番号: 昭和42(し)69 / 裁判年月日: 昭和42年12月20日 / 結論: 棄却
前に逮捕状の発付があつた同一被疑者に対する再度の逮捕状の発付が、いわゆる逮捕のむしかえしによる逮捕権の濫用と認められないときは、右逮捕状の請求書に刑訴規則第一四二条第一項第八号所定の事項の記載を欠いていても、右の逮捕およびこれにひきつづきなされた勾留は違法ではない。
事件番号: 昭和42(し)26 / 裁判年月日: 昭和42年8月31日 / 結論: 棄却
甲被疑事実による勾留を利用して乙被疑事実につき取り調べた後、いつたん釈放し直ちに乙被疑事実により逮捕勾留した場合において、乙事実について公訴が提起され、その後も勾留理由があるときは、起訴前の段階における右のような勾留およびその勾留中の捜査官の取調べの当否は、起訴後における勾留の効力に影響を及ぼさない。
事件番号: 令和6(し)262 / 裁判年月日: 令和6年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留の際の被疑事件告知において、個人特定事項を秘匿する方法(刑訴法207条の2第2項)によったとしても、他の事項から事件を特定可能であれば、憲法34条に違反しない。 第1 事案の概要:被疑者を勾留するに当たり、裁判官が刑訴法207条の2第2項の規定を適用し、被害者等の個人特定事項を伏せた状態で被疑…