起訴前の勾留の裁判に対する準抗告申立の利益は起訴後は失われるとされた事例
刑訴法429条1項2号,刑訴法433条
判旨
起訴前の勾留の裁判に対する準抗告の申立の利益は、被疑者が同一の犯罪事実により起訴された後は、その身分が被告人へと移行し、身分拘束の根拠が被告人勾留へ切り替わるため失われる。
問題の所在(論点)
起訴前の勾留の裁判に対する準抗告(刑事訴訟法429条1項2号)について、その審理中に被疑者が同一の犯罪事実により公訴提起された場合、不服申立ての利益が認められるか。
規範
不服申立ての利益(訴えの利益)の有無は、当該裁判を取り消すことによって実効的な権利救済が可能か否かにより判断される。起訴前の勾留(被疑者勾留)に対する準抗告において、起訴によって拘束の性質が変化した場合には、特段の事情のない限り申立の利益は消滅する。
重要事実
申立人は、強制猥褻致傷被疑事件について簡易裁判所裁判官がした勾留決定に対し、準抗告を申し立てた。しかし、当該準抗告の棄却決定に対する再抗告の審理中に、申立人は同一の事実により起訴され、被疑者から被告人へと立場が変化した。
あてはめ
申立人は昭和63年7月1日に勾留されたが、同月8日に同一事実により起訴されている。起訴後は刑事訴訟法上の身分が被疑者から被告人に移行し、拘束の根拠は被告人勾留に切り替わったといえる。したがって、先行する起訴前の勾留裁判の当否を争い、これを取り消したとしても、現在の拘束状態を解消する直接的な効力は失われていると評価せざるを得ない。
事件番号: 平成2(し)142 / 裁判年月日: 平成2年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被疑者が勾留中のまま同一の犯罪事実により公判請求(起訴)された場合、起訴前の勾留に関する裁判の取消しを求める不服申立ては、もはや法律上の利益を欠き不適法となる。 第1 事案の概要:申立人は強姦被疑事件について、勾留期間延長の裁判を受けた。これに対し申立人は準抗告を申し立てたが棄却されたため、さらに…
結論
起訴前の勾留の裁判に対する不服申立ての利益は、起訴後は失われるため、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
被疑者勾留の不服申立て中に起訴がなされた場合の処理に関する標準的な先例である。答案上は、身体拘束の適法性を争う際に、起訴前後での手続的分断と訴えの利益の有無を論証する際に用いる。ただし、理由なき勾留による国家賠償請求等の余地は別問題として残る点に留意する。
事件番号: 昭和59(し)115 / 裁判年月日: 昭和59年11月20日 / 結論: その他
起訴前の勾留の裁判に対する準抗告申立の利益は、起訴後は失われる。
事件番号: 平成3(し)112 / 裁判年月日: 平成3年10月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留期間延長の裁判に対する不服申立てにおいて、既に被疑者が釈放されている場合には、裁判を取り消すことによる法律上の利益が失われるため、抗告は不適法となる。 第1 事案の概要:申立人は勾留期間延長の裁判を受けたが、その後、平成3年10月15日に釈放された。しかし、申立人は当該勾留期間延長の裁判の取消…
事件番号: 昭和43(し)63 / 裁判年月日: 昭和43年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴前の接見等指定処分に対し準抗告等を申し立てている間に、被疑者が公訴を提起された場合には、当該処分の取消しを求める訴えの利益は消滅する。 第1 事案の概要:本件申立人(被疑者)は、起訴前の勾留中、検察官から弁護人との接見交通につき日時場所の指定処分を受けた。申立人はこの指定処分の当否を争い、不服…
事件番号: 昭和44(し)63 / 裁判年月日: 昭和44年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴前の勾留段階における捜査官の取調べの不当性は、起訴後の勾留の効力に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和44年9月5日に公訴が提起され、以降は「被告人」として勾留されていた。被告人側は、起訴前の勾留段階において捜査官による不当な取調べが行われたことを理由に、現在(起訴後)の勾留の…