判旨
裁判の迅速が欠かれたことは係官の責任問題を生じ得るが、それ自体は裁判を破棄すべき理由にはならない。
問題の所在(論点)
裁判の迅速(憲法37条1項)が損なわれた場合に、そのことを理由として裁判の破棄を求めることができるか。
規範
憲法37条1項の保障する「迅速な裁判」を受ける権利について、裁判手続に遅延があったとしても、そのこと自体は当然に裁判の内容を違法とし、これを破棄すべき理由とはならない。裁判の遅滞は、国家賠償法上の責任など担当官の責任問題を生じさせる余地はあるものの、既になされた裁判の効力そのものを否定する根拠にはならない。
重要事実
少年審判事件の抗告審において、再抗告人は裁判が迅速を欠いたことを理由に、憲法37条1項および11条に違反すると主張して、原裁判の破棄を求めた。
あてはめ
最高裁は、昭和23年12月22日の大法廷判決の先例を引用した。本件において裁判が迅速を欠いたかどうかという事実は、仮に肯定されたとしても、それは係官の責任問題(公務員の不法行為責任等)を発生させる可能性に留まる。裁判手続の遅延を理由に、直ちに裁判自体の効力を否定し破棄することは、判例の趣旨に照らして認められないと判断した。
結論
裁判の迅速を欠くことは裁判破棄の理由とならないため、本件再抗告を棄却する。
実務上の射程
憲法37条1項違反を理由に公訴棄却や裁判破棄を主張する際の限界を示す判例である。ただし、後の高田事件判決(最判昭47.12.20)により、異常な遅延がある場合には公訴棄却が認められる余地が示されたため、本判決の射程は「通常の遅延」の範囲に限定して理解すべきである。
事件番号: 昭和32(し)16 / 裁判年月日: 昭和32年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年院送致決定の審判手続に憲法違反があるとの主張であっても、その実質が単なる法令違反の主張に過ぎない場合には、再抗告の理由として認められない。 第1 事案の概要:家庭裁判所が少年に向けて少年院送致の決定を行い、これに対し抗告がなされた。抗告裁判所が原決定を是認したため、さらに最高裁判所に対して憲法…
事件番号: 昭和41(し)52 / 裁判年月日: 昭和42年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年審判の手続において、憲法37条3項が保障する弁護人依頼権の趣旨は、既に弁護士である付添人が選任されている場合にはその前提を欠き、憲法違反の問題は生じない。 第1 事案の概要:東京家庭裁判所における少年審判の手続を経て、少年側が再抗告を申し立てた事案である。再抗告人は、原審の手続に関し、国選弁護…
事件番号: 昭和43(し)5 / 裁判年月日: 昭和43年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法35条に基づく再抗告において、実質的に単なる法令違反を主張するものや、事案の異なる判例の引用による判例違反の主張は、適法な再抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:本件は、少年審判の決定に対し再抗告がなされた事案である。再抗告人は、第一点として憲法違反を主張し、第二点として判例違反を主張…
事件番号: 昭和26(し)78 / 裁判年月日: 昭和26年12月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法35条1項の再抗告は、同条に規定された憲法違反または憲法解釈の誤り等の事由を理由とする場合に限り許容され、単なる事実誤認や処分の不当を主張するものは不適法である。 第1 事案の概要:申立人は窃盗等の非行事実により中等少年院送致の保護処分を受けた。これに対し申立人は、(1)家からの持ち出し窃盗…
事件番号: 昭和32(す)223 / 裁判年月日: 昭和32年4月5日 / 結論: 棄却
論旨の主張する、原決定(少年を中等少年院に送致する旨の保護処分決定)の結果として、事実上、本件少年が所論主張の高等学校教育を受ける機会を失うというようなことは、教育基本法三条一項所定の事由によつて差別的待遇を受けることに該当するものではない。