判旨
同一の裁判官が共犯者の公判審理を担当し、被告人の事件内容に関する知識を得ていたとしても、それのみでは不公平な裁判をするおそれがあるとはいえず、裁判官の忌避事由には当たらない。
問題の所在(論点)
同一の裁判官が共犯者の公判審理を行うことにより、被告人の事件内容についての知識を得ていることが、刑事訴訟法21条1項の「不公平な裁判をする虞があるとき」に該当し、忌避の理由となるか。
規範
刑事訴訟法21条1項にいう「不公平な裁判をする虞があるとき」とは、通常人の判断において、裁判官が事件につき偏見や予断を抱き、不公平な裁判をするのではないかという疑いを抱くに足りる客観的な事情がある場合を指す。単に裁判官が職務上他の関連事件の審理に関与し、当該被告人の事件内容について知識を得ているという事実のみでは、直ちにこの客観的事情があるとは認められない。
重要事実
被告人らの事件に関し、担当裁判官がこれより先に共犯者の公判審理を行っていた。被告人側は、当該裁判官が共犯者の公判を通じて被告人らの事件内容につき知識を得ており、不公平な裁判をするおそれがあるとして、裁判官の忌避を申し立てた。
あてはめ
本件において、忌避の理由とされた事実は、裁判官が共犯者の公判審理を通じて被告人らの事件内容につき知識を得ているという点に尽きる。しかし、裁判官が適法な裁判手続において得た知識を基に判断を行うことは、職務上の当然の過程であり、これをもって直ちに不公平な偏見を抱いていると断定することはできない。したがって、本件の事由をもって不公平な裁判をするおそれがある客観的事情があるとはいえない。
結論
本件の事実は裁判官の忌避理由に当たらないため、忌避申立てを却下した原決定は正当である。
実務上の射程
事件番号: 昭和46(し)57 / 裁判年月日: 昭和46年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の事件の審理に関与した裁判官が、別の共犯者の事件を担当することは、憲法37条1項が保障する不公平な裁判をするおそれがあるものとはいえず、違憲ではない。 第1 事案の概要:被告人は、自身の事件の審理を担当する裁判官が、以前に当該事件と共犯関係にある他の被告人の事件の審理に関与していたことを理由…
裁判官が関連事件の審理に関与したことのみを理由とする忌避申立ては、実務上原則として認められない。憲法37条1項の「公平な裁判所」の趣旨に反しないことを確認した判例であり、同様の場面での論証において、予断を抱く客観的事情の有無という枠組みを基礎付ける際に活用できる。
事件番号: 昭和50(し)12 / 裁判年月日: 昭和50年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の事件の審理に関与し、当該事件において被告人の供述調書を証拠採用した裁判官が、後に被告人自身の事件の審理を担当することは、憲法37条1項が保障する不公平な裁判をするおそれがあるものとはいえない。 第1 事案の概要:被告人の共犯者について行われた刑事事件の審理に関与した裁判官が、当該共犯者の事…
事件番号: 昭和58(し)14 / 裁判年月日: 昭和58年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の事件を担当する裁判官が、共犯者の事件審理を通じて被告人の事件内容に関する知識を得ていたとしても、それのみでは不公平な裁判をするおそれがあるとはいえず、憲法37条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の事件の審理を担当した裁判官が、それに先立って共犯者の事件の審理を担当していた。抗告人…
事件番号: 昭和47(し)78 / 裁判年月日: 昭和47年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官が不公平な裁判をするおそれがあるとは認められない場合、刑事訴訟法24条1項に基づく忌避の申立ては却下されるべきである。本決定は、具体的な記録に照らし、憲法37条1項等の違反がないことを確認したものである。 第1 事案の概要:申立人は、背任被告事件の担当裁判長である金子裁判長に対し、不公平な裁…
事件番号: 昭和48(し)114 / 裁判年月日: 昭和49年1月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官において不公平な裁判をするおそれがあるとはいえない場合には、憲法37条1項にいう公平な裁判所の要件に反しない。 第1 事案の概要:抗告人は、特定の裁判官(高木實裁判官)が審理に関与することについて、不公平な裁判をするおそれがあるとして憲法37条1項違反を主張し、抗告を申し立てた。なお、具体的…