判旨
自動車運送事業の経営を免許制とし、自家用自動車の有償運送を制限・禁止する道路運送法の規定は、公共の福祉による正当な制限として、憲法22条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
道路運送法が定める自動車運送事業の免許制、および自家用自動車による有償運送の原則禁止・処罰規定が、憲法22条1項の「職業選択の自由」を不当に制限し違憲とならないか。
規範
職業選択の自由(憲法22条1項)に対する制限が合憲とされるためには、その制限が「公共の福祉」に基づき、目的が正当で、かつその目的を達成するための手段が合理的である必要がある。特に、特定の事業を免許制(許可制)とすることは、職業の自由に対する強力な制限となるが、交通の安全や輸送の秩序維持といった重要な公共の利益を達成するために必要かつ合理的な範囲内であれば、合憲と判断される。
重要事実
被告人らは、道路運送法に基づく免許を受けることなく、自動車運送事業を経営し、または自家用自動車を用いて有償で運送業務を行った。これに対し、道路運送法4条1項(事業免許)、101条1項(自家用車の有償運送禁止)、およびそれらに対する罰則規定(128条1号、128条の3第2号)が憲法22条1項の保障する職業選択の自由を侵害し違憲であると主張して争われた事案である。
あてはめ
最高裁は先行する大法廷判決(昭和38年12月4日判決等)を引用し、道路運送法の各制限規定が憲法22条1項に違反しないことを判示した。具体的には、自動車運送事業が公共性の高い事業であることに鑑み、無秩序な競争による輸送サービスの低下や交通事故の誘発を防止し、健全な輸送秩序を確立するという「公共の福祉」上の目的は正当であると解される。そして、これらの目的達成のために免許制を採り、安易な自家用車の参入を制限する手段は、目的との間に合理的な関連性があり、必要かつ合理的な制限の範囲内にあるといえる。
結論
道路運送法における免許制および自家用自動車の有償運送制限規定は、憲法22条1項に違反せず、合憲である。
実務上の射程
本判決は、いわゆる「積極目的」による経済的自由の制限を扱う文脈で参照される。薬事法判決(最大判昭50・4・30)以前の判断ではあるが、道路運送の安全確保や秩序維持といった強力な公共的要請がある分野においては、免許制(許可制)という厳格な制限であっても、依然として合憲性が維持されやすいことを示す指標となる。
事件番号: 昭和36(あ)1903 / 裁判年月日: 昭和39年1月24日 / 結論: 棄却
自動車運送事業の経営の全面的な免許制が憲法第一三条、第二二条の各規定に違反するものでないことは、当裁判所大法廷の判例(昭和三五年(あ)第二八五四号同三八年一二月四日判決)の趣旨に徴し明らかである。
事件番号: 昭和39(あ)979 / 裁判年月日: 昭和40年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】道路運送法における事業の許可制および無許可営業に対する罰則規定は、公共の福祉に基づく正当な制限であり、憲法14条および22条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が道路運送法に基づく許可を受けずに、同法4条ないし6条の2等に規定される事業(自動車運送事業等)を行ったとして、同法128条の3第…
事件番号: 昭和62(あ)588 / 裁判年月日: 昭和62年10月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】道路運送法における一般旅客自動車運送事業の許可制は、職業の自由を制限するものであるが、公共の福祉に適合するものとして憲法22条1項に違反しない。いわゆる白タク営業の禁止規定を適用することは合憲である。 第1 事案の概要:被告人が、道路運送法4条1項に基づく一般旅客自動車運送事業の許可を受けずに、自…