判旨
裁判が迅速を欠き憲法37条1項の趣旨に反する結果となったとしても、当然には判決破棄の理由となるものではない。
問題の所在(論点)
裁判の著しい遅延が認められる場合、憲法37条1項の「迅速な裁判」を受ける権利の侵害を理由として、直ちに原判決を破棄することができるか。
規範
憲法37条1項が保障する「迅速な裁判」の要請に反する事態が生じたとしても、そのこと自体が直ちに刑事訴訟法上の判決破棄事由(適正手続違反等)を構成するものではない。裁判の遅延が認められる場合であっても、裁判の効力そのものを否定する根拠とはならない。
重要事実
被告人Bに対し、昭和32年4月から昭和35年5月までの間に多数回にわたって公訴が提起された。第一審判決は昭和37年1月、第二審判決は昭和41年11月に宣告された。これに対し、弁護人は裁判が迅速を欠き憲法37条1項に違反するとして、判決の破棄を求めて上告した。
あてはめ
本件では、公訴提起から二審判決までに約9年を要しており、裁判が迅速を欠いている事実は認められる。しかし、判例の立場によれば、憲法37条1項の趣旨に反する結果となったとしても、それが刑事訴訟法405条等に基づく判決破棄の直接的な理由にはならない。したがって、被告人側の違憲の主張は採用できない。
結論
上告棄却。裁判の遅延は判決破棄の理由とはならない。
実務上の射程
本判決は、迅速な裁判の権利侵害に対する救済策として「判決破棄」を否定した初期の判例である。後に高田事件判決(最大法判昭47.12.20)が、異常な遅延がある場合には「免訴」を認める法理を示したため、現在の実務・答案作成においては、高田事件の規範(遅延の原因、被告人の不利益、遅延の程度等の総合考慮)を主軸に据えるべきであり、本判決はその前段階の議論として位置づけられる。
事件番号: 昭和27(れ)57 / 裁判年月日: 昭和27年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同被告人の一人の判決に審理不尽等の破棄理由がある場合であっても、他の被告人との間にその破棄理由が共通しない限り、当然には判決を破棄し差戻す必要はない。 第1 事案の概要:被告人らは、Cと原審および当審において共同被告人の関係にあった。Cについては、第二審判決において公判審理の更新をしないという手…
事件番号: 昭和37(あ)1066 / 裁判年月日: 昭和37年10月26日 / 結論: 棄却
本件被告事件につき、第一審の有罪判決が言い渡され、被告人から控訴の申立をなし、第一審の大分地裁日田支部から原審の福岡高等裁判所え一件記録が送付せられる迄二年五ケ月以上を経過していること、その遅延した理由が第一審担当事務官の過失によるものであることは所論のとおりであるが右の如き事情で裁判の迅速を欠いたとしても、これにより…