判旨
判決に影響を及ぼさない軽微な事実誤認があっても、その余の証拠により共謀関係が認められる場合には、有罪判決を維持することができる。
問題の所在(論点)
刑法60条の共謀共同正犯の成立要件に関し、判決文中に証拠に基づかない事実の摘示がある場合であっても、判決に影響を及ぼさないものとして適法な共謀認定を維持できるか。
規範
判決に影響を及ぼさない事実誤認(証拠に基づかない事実認定)がある場合であっても、原判決のその余の判示について証拠に基づき肯定でき、それによって被告人の共謀関係を認定できるときは、判決の結果を左右する違法とはならない。
重要事実
被告人Fは、他の相被告人らと本件犯行について共謀したとして起訴された。原判決には、第一審判決が挙げた証拠では認定できない事実を一部引用している箇所があったが、それ以外の判示事項については適法な証拠に基づき認定されていた。
あてはめ
原判決の一部に証拠に基づかない認定が含まれていることは所論の通りである。しかし、原判決のその余の判示については、第一審判決が挙示した証拠によって十分に肯認することができる。これに基づけば、被告人Fが本件犯行について相被告人らと共謀関係にあったと認めた原判決の判断は正当であり、一部の事実誤認は判決に影響を及ぼさない。
結論
被告人Fと相被告人らとの共謀関係は認められ、原判決の一部違法は判決に影響を及ぼさないため、上告は棄却される。
実務上の射程
司法試験の実務上は、共謀の認定において一部に事実認定の誤りがあったとしても、他の間接事実や証拠によって共謀の意思連絡を推認可能であれば、結論として有罪認定を維持できるという論理で活用できる。
事件番号: 昭和56(あ)1004 / 裁判年月日: 昭和56年12月21日 / 結論: 棄却
謀議された計画の内容においては被害者の殺害を一定の事態の発生にかからせていたとしても、そのような殺害計画を遂行しようとする意思が確定的であつたときは、殺人の故意の成立に欠けるところはない。
事件番号: 昭和56(あ)897 / 裁判年月日: 昭和59年4月24日 / 結論: 破棄差戻
殺人教唆等の公訴事実についての唯一の直接証拠である被教唆者の検察官に対する供述調書の証拠価値に疑問を容れる余地がないとはいえず、被告人のアリバイの成否について幾多の疑問が残されているのに(判文参照)、被告人を有罪とした原判決は、刑訴法四一一条一号、三号により破棄を免れない。
事件番号: 昭和46(あ)2535 / 裁判年月日: 昭和47年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として判例違反を主張する場合には、違反するとされる判例を具体的に摘示する必要があり、その欠如は適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人が、事実誤認および量刑不当を理由に上告を申し立てた。その際、弁護人の一人が判例違反を主張したが、どの判例に違反するかという具体的な摘示を欠いた…
事件番号: 昭和38(あ)2921 / 裁判年月日: 昭和39年11月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成立には、共謀者間で犯罪の具体的計画につき意思の合致があることを要するが、包括的な命令であっても、それに基づき順次共謀が遂げられれば共謀の成立を妨げない。また、共謀の一部に「殺傷もやむを得ない」という未必的な認識が含まれる場合であっても、殺人の共謀として認めることができる。 第1 事…