いわゆる四九・一〇・三東大井内ゲバ殺人事件
判旨
捜査段階において弁護人の立会いなく実施された面通しに基づく証人供述であっても、直ちに有罪認定の証拠から排除されるものではなく、その許容性は憲法31条、34条、37条に違反しない。
問題の所在(論点)
捜査段階で弁護人の立会いなく行われた面通し手続、およびそれに基づく証人供述を証拠として採用することが、憲法31条(適正手続)、34条(弁護人依頼権)、37条(証人喚問権・弁護権)に違反し、証拠能力を否定すべき違法なものといえるか。
規範
捜査段階における面通し(犯人の同一性識別手続)において、弁護人の立会いを欠いたとしても、そのこと自体によって直ちに証拠能力が否定されるものではない。証拠の許容性は、識別手続の正確性や、公正な手続の保障を定めた憲法(31条、34条、37条)の趣旨に照らし、手続全体の適正性を総合的に考慮して判断される。
重要事実
被告人が犯人であるか否かが争点となった刑事事件において、捜査機関は捜査段階で目撃者等の証人に対し、弁護人の立会いがない状態で面通しを実施した。原審は、当該面通しに基づく証人の供述を有罪認定の証拠として採用した。これに対し、被告人側は、弁護人の立会いがない面通しに基づく供述を証拠とすることは違憲であり、違法であると主張して上告した。
あてはめ
判旨によれば、弁護人の立会いがない面通し手続によって得られた証人供述を証拠とした点について、実質的には証拠の正確性に関する経験則違反や単なる法令違反を主張するものに過ぎないと判断された。憲法31条等の違反をいう主張についても、実質的な違憲性は認められず、捜査段階の面通しにおける弁護人立会いの欠如が直ちに有罪認定の妨げにはならないとされる。本件においても、面通しや写真選別等の識別手続の正確性に関する判断に不合理な点は認められない。
事件番号: 昭和54(あ)846 / 裁判年月日: 昭和54年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法208条の2に規定される「兇器」等の文言は、憲法31条が要求する刑罰法令の明確性の原則に照らして、あいまい、不明確であるとはいえない。 第1 事案の概要:被告人らは、凶器準備集合罪(刑法208条の2)の規定に関し、「兇器」等の文言が不明確であり、罪刑法定主義を定める憲法31条に違反すると主張し…
結論
弁護人の立会いがない面通しに基づく供述を証拠とすることは違憲・違法ではなく、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟における犯人識別手続の証拠能力・証明力の争点において、弁護人立会権の要否に関する否定的な判例として引用できる。実務上は、立会いの有無よりも「面通しの状況が誘導的でなかったか」等の識別手続自体の信頼性(正確性)が証明力の問題として重視される傾向にあることを示す資料となる。
事件番号: 昭和52(あ)1354 / 裁判年月日: 昭和53年2月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の弁護人依頼権が実質的に侵害されたと認められない限り、憲法37条3項違反の主張は前提を欠き、上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人は、憲法37条3項違反(弁護人依頼権の侵害)等を理由に上告を申し立てた。しかし、記録上、被告人が弁護人を依頼する機会が不当に妨げられた事実は認められず、…
事件番号: 昭和42(あ)3021 / 裁判年月日: 昭和43年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼさない軽微な事実誤認があっても、その余の証拠により共謀関係が認められる場合には、有罪判決を維持することができる。 第1 事案の概要:被告人Fは、他の相被告人らと本件犯行について共謀したとして起訴された。原判決には、第一審判決が挙げた証拠では認定できない事実を一部引用している箇所があ…
事件番号: 昭和58(あ)1400 / 裁判年月日: 昭和62年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の自白調書の証拠能力について、その任意性に疑いがないと認められる場合には、憲法31条、38条に違反せず、証拠として採用することが認められる。 第1 事案の概要:被告人A、Bおよびその共犯者らによる刑事事件において、検察官側が共犯者らの各供述調書を証拠として提出した。これに対し弁護側は、当該供…