刑訴第四八条第三項所定期間内に整理されなかつた公判調書であつても、単にその一事だけは無効と解することはできない。
刑訴法第四八条第三項所定期間内に整理されなかつた公判調書とその効力
刑訴法48条,刑訴法50条
判旨
公判調書が法定の期間内に整理作成されなかったとしても、直ちにその調書が無効となるわけではなく、また裁判所が公判廷で直接聞いた証言自体を証拠として判決した場合には、証拠に基づかない認定という違法も生じない。
問題の所在(論点)
公判調書が刑事訴訟法48条3項所定の期間内に作成されなかった場合に、当該調書は無効となるか。また、調書未完成の状態でなされた判決は、証拠に基づかない事実認定として違法(刑訴法317条違反)となるか。
規範
公判調書が刑事訴訟法48条3項所定の期間内に整理作成されていなかったとしても、その一事をもって直ちに当該調書が無効となるものではない。また、裁判所が公判廷において直接聞知した証言自体を証拠として事実認定を行う場合、判決言渡し時に調書が未完成であっても、虚無の証拠により事実認定をした違法(証拠裁判主義違反)は生じない。
重要事実
被告人が原審の公判手続等に関し、憲法違反や法令違反を理由に上告した事案。弁護人は、原審第3回公判調書中の証人Aの供述部分が差し替えられた疑いがあること、また、当該調書が刑訴法48条3項の定める期間内に整理作成されていなかったことから無効であり、それに基づいた判決は証拠によらない事実認定であると主張した。職権調査の結果、弁護人が閲覧したものは未完成の状態であり、調書の完成が法定期間を超えていた事実は認められた。
あてはめ
まず、公判調書の作成が法定期間(次回の公判期日まで、又は判決後一定期間内)に遅延したとしても、その作成手続の遅滞のみで直ちに調書の法的効力が否定されるものではない。次に、事実認定の基礎について検討するに、原審は公判廷において直接聴取した証人Aの証言そのものを証拠として判断を下している。記録上、調書の記載を証拠としたわけではないことが明白である以上、判決時に調書の整理が完了していなかったとしても、証拠によらずに事実を認定したという非難は当たらない。
結論
公判調書の作成遅延は直ちに無効原因とはならず、また公判廷で直接聴取した証言に基づき判決を行っている以上、証拠裁判主義に反する違法はない。
実務上の射程
公判調書の作成手続の瑕疵(期間徒過)が判決の効力に及ぼす影響を限定的に解した判例である。答案上は、公判手続の適法性が争点となる場面で、手続規定の違反が直ちに実体判決の違法を導くわけではないことの根拠として利用できる。特に口頭弁論主義・直接主義のもとでは、証拠の本体は公判廷での供述そのものであり、調書はそれを録取した書面に過ぎないという理屈を示唆している。
事件番号: 昭和24(れ)1725 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】裁判所が証拠調べをしていない証拠を事実認定の基礎とすることは、訴訟手続上の重大な違法であり、その証拠が事実認定に不可欠なものである場合には判決の破棄事由となる。 第1 事案の概要:第一審または控訴審において被告人の殺人の事実を認定する際、裁判所は被告人および関係人Aに対する検察官面前調書を証拠とし…