一 一審判決認定の事実関係の下で、被告人の所為を横領罪に当るとした原判断は正当である。 二 (原判断の大要は、次のとおり)「不動産(時価千万円位相当)の所有者からその不動産を担保として銀行から資金の融資を受け、一年以内に礼金(五〇万円位)を添えきれいにして返す旨の約で、一時登記名義を移すために必要な書類等を預かり、移転登記を経て、法律上これを占有した者が、期限内に弁済できる見込がないのにかかわらず、他人から四〇七万円を期限二ケ月半の約で借り受けるにあたり右不動産につき右債務不履行を停止条件とする代物弁済契約をなし、その旨の登記をなすが如きは、原状回復義務の履行不能を予見しつつ不動産を処分するものにほかならず所有者でなければできない処分行為で、横領罪を構成する。」
横領罪が成立するとされた事例
刑法252条,刑法247条
判旨
不動産の二重売買において、第一譲受人に対し登記移転義務を負う売主が、第二譲受人に登記を移転して対抗要件を具備させる行為は、特段の事情がない限り、横領罪を構成する。
問題の所在(論点)
不動産の売主が、第一譲受人に対し登記移転義務を負う状態で、当該不動産を第二譲受人に売却し登記を移転した場合、横領罪が成立するか(刑法252条1項)。
規範
不動産の売主が第一買主との売買契約に基づき、当該不動産を他人のために保管する者の地位に立った後、当該不動産を第三者に売却し、かつ登記を移転する行為は、特段の事情がない限り、委託の任務に背いて自己または第三者の利益を図る処分行為として横領罪(刑法252条1項)を構成する。
重要事実
被告人Bは、不動産の売買において第一譲受人に対して登記を移転すべき義務を負う立場にありながら、当該不動産を別の者に売却し、登記を移転した。原審および一審判決は、この事実関係に基づき被告人の行為を横領罪にあたると判断した。
あてはめ
判決文からは詳細な事実関係は不明であるが、原審が認定した「被告人の所為」は、不動産の二重譲渡により第一譲受人の信頼を裏切り、登記という法律上の支配力を第三者に移転させるものである。これは自己の占有(保管)する他人の物を不法に領得する意思の現れであり、横領罪の構成要件を充足すると判断された。
結論
被告人の行為は横領罪に当たる。したがって、原審の判断は正当であり、本件各上告を棄却する。
実務上の射程
不動産二重譲渡における横領罪の成立を肯定した実務上重要な先例である。答案上は、不動産における「占有」を登記保持による法律上の支配力と捉え、登記を具備させる行為を「処分」として論じる際の根拠となる。背任罪との区別が問題となるが、判例は伝統的に横領罪の成立を認める傾向にある。
事件番号: 昭和42(あ)2074 / 裁判年月日: 昭和43年5月23日 / 結論: 棄却
他人との共有にかかる土地を、その依頼により、表面上単独所有者として第三者に売り渡した者が、その第三者から受領した代金は、特約ないし特殊の事情の認められないかぎり、その他人との共有に属し、横領罪の客体となる。