被告人が、常習累犯として、同一の機会に同一の被害者からまず現金千円をすり取り、さらに現金七千円をすり取ろうとしたが逮捕されて遂げなかつた場合は、包括して窃盗既遂の一個の罪と認めるべきであるから、盗犯等の防止及び処分に関する法律第三条、刑法第二三五条を適用すれば足り、その他に刑法第二四三条を適用すべきではない。
被告人が常習累犯として同一の機会に同一の被害者からまず現金千円をすり取りさらに現金七千円をすり取ろうとしたが逮捕されて遂げなかつた場合の擬律
盗犯等の防止及び処分に関する法律3条,刑法235条,刑法243条
判旨
同一の機会に同一の被害者から金員を窃取し、さらに同人から重ねて金員を窃取しようとした場合、これらを包括して一個の窃盗既遂罪として成立する。
問題の所在(論点)
同一の機会に同一の被害者に対して行われた、既遂行為と未遂行為が混在する一連の窃盗行為の罪数関係および成立する罪名(包括一罪の成否)。
規範
同一の機会に、同一の被害者の法益を侵害する目的で行われた一連の行為は、既遂と未遂の過程が含まれていたとしても、全体として包括して一個の既遂罪を構成する。
重要事実
被告人は、同一の機会において、同一の被害者からまず現金1,000円をすり取った(既遂)。その後、さらに同じ被害者から現金7,000円をすり取ろうとしたが、逮捕されたため目的を遂げられなかった(未遂)。第一審および原審は、窃盗既遂罪と窃盗未遂罪の双方(刑法235条、243条)を適用していた。
あてはめ
被告人の行為は、同一の機会に同一の被害者を対象としたものである。まず1,000円を窃取した時点で窃盗罪の既遂に達しており、その直後の7,000円の窃取未遂行為は、先行する既遂行為と時間的・場所的に密接に関連している。このような場合、犯行の単一性および被害法益の同一性に鑑み、後続の未遂行為は既遂の窃盗罪に吸収され、全体として包括して一個の窃盗既遂罪と認められるべきである。したがって、未遂罪(刑法243条)を別途適用した原判決の法適用の誤りがある。
結論
被告人の本件行為は、包括して窃盗既遂の一個の罪を構成する。原判決に法適用の誤りは認められるが、既遂罪の罰条(盗犯等防止法3条、刑法235条)は適用されているため、判決に影響を及ぼすものではないとして上告棄却。
実務上の射程
同一機会・同一被害者に対する窃盗の連鎖について、既遂が含まれる場合には全体を包括一罪(既遂)として扱う実務上の準拠となる。答案上、罪数論において、個別の実行行為を分けずに一罪として処理する際の論拠として有用である。
事件番号: 昭和29(あ)2147 / 裁判年月日: 昭和29年10月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】別の事件で既に有罪判決が確定している場合に、本件の犯罪行為について別途量刑を行うことは、刑法上の併合罪の規定等に照らし適法である。 第1 事案の概要:被告人には、本件の犯罪行為より先に言い渡された別の事件の有罪判決が存在していた。原審は、当該先行判決との関係を考慮した上で、本件の各犯罪行為について…
事件番号: 昭和45(あ)649 / 裁判年月日: 昭和45年7月21日 / 結論: 棄却
いわゆる常習累犯窃盗の罪についても、刑法の累犯加重の規定の適用がある(昭和四四年六月五日第一小法廷決定、刑集二三巻七号九三五頁参照)。