起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定し、実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料に考慮することは許されないが、単に被告人の性格、経歴および犯罪の動機、目的、方法等の情状を推知するための資料としてこれを考慮することは、憲法第三一条、第三九条に違反しない。
起訴されていない犯罪事実を量刑の資料として考慮することと憲法第三一条第三九条
憲法31条,憲法38条3項,憲法39条,刑訴法317条,刑訴法319条2項,刑訴法319条3項
判旨
起訴されていない余罪を実質的に処罰する趣旨で量刑上考慮することは許されないが、被告人の性格や犯行の動機等の情状を推知するための資料として考慮することは許される。
問題の所在(論点)
未起訴の犯罪事実(いわゆる余罪)を量刑の資料として考慮することが許されるか、またその許容限度はどこにあるか(刑事訴訟法247条、317条、憲法31条等)。
規範
刑事裁判における量刑において、未起訴の犯罪事実(余罪)を実質上処罰する趣旨で重く処罰することは、不告不理の原則、証拠裁判主義、適正手続(憲法31条)、自白法則(憲法38条3項)、一事不再理(憲法39条)の観点から許されない。もっとも、量刑のための一情状として、被告人の性格、経歴、犯罪の動機、目的、方法等を推知するための資料として余罪を考慮することは、合理的に検討して必要な限度にとどまる限り、直ちに禁ぜられるものではない。
重要事実
被告人が窃盗罪で起訴された事案において、原判決は「本件以前にも約6ヶ月間多数回にわたり同様な犯行を重ね、それによって得た金員を飲酒、小遣い銭、生活費等に使用したこと」を量刑上考慮した。弁護人は、これが実質的に余罪を処罰するものであり違憲・違法であるとして上告した。
あてはめ
原判決は、余罪の回数や金額を具体的に特定しておらず、むしろ窃取金の使途という犯罪成立後の事情を詳細に判示している。この判示態様を前後の文脈と併せて検討すれば、当該余罪を処罰する趣旨で重く量刑したものではなく、あくまで本件起訴事実にかかる窃盗の動機、目的、および被告人の性格等を推知するための「情状の資料」として考慮したものと解するのが相当である。したがって、合理的な限度を超えた考慮とはいえない。
結論
本件において余罪を情状として考慮した原判決に憲法違反や法理の誤認はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
答案上は「実質的処罰」と「情状推知資料」の区別が核心となる。具体的事実の摘示(日時・場所・態様の特定)がある場合は「実質的処罰」に傾きやすく、本件のように包括的な言及に留まる場合は「情状資料」と評価されやすい。余罪を考慮する際は、その証拠調べも「必要な限度」に抑制されるべきであるとする点にも留意が必要である。
事件番号: 昭和40(あ)1251 / 裁判年月日: 昭和41年7月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴されていない余罪を刑の量定の資料として用いることは、憲法38条3項(自白のみによる有罪判決の禁止)の趣旨に照らし、原則として許されない。ただし、被告人の性格、経歴、犯罪の動機、目的、方法、結果等を判断するための資料として考慮することは許容される。 第1 事案の概要:被告人が起訴された犯罪事実と…