控訴審の第一回公判期日において、弁護人の出頭はあつたが被告人の出頭がないまま実質審理を行ない即日結審している場合において、同公判期日についての召喚手続または同公判期日の通知が被告人に対しなされていないときは、その訴訟手続は違法であり、原判決を破棄しなければいちじるしく正義に反する。
控訴審の公判期日について被告人に対する召喚手続または公判期日の通知を怠つた場合と破棄事由
刑訴法273条2項,刑訴法390条,刑訴法404条,刑訴法411条1号
判旨
被告人に対する召喚または公判期日の通知が全くなされていないまま、被告人不在で実質審理を行い結審した原審の訴訟手続は、刑訴法411条1号の「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」に該当し、破棄を免れない。
問題の所在(論点)
被告人に対する適法な召喚または期日通知がないまま、被告人不在の状態で実質審理および結審を行うことは、刑事訴訟法上の訴訟手続の法令違反(411条1号)に該当するか。
規範
公判期日における被告人の出席権は、適正な防御機会を確保するための不可欠な手続的権利である。したがって、被告人に対し適法な召喚手続や期日の通知が行われず、かつ被告人が出頭していない状態で実質審理を強行することは、訴訟手続の重大な法令違反にあたり、これを是認することは著しく正義に反する。
重要事実
原審の第一回公判期日において、弁護人は出頭していたが被告人は出頭していなかった。それにもかかわらず、裁判所は実質審理を行い、同日中に結審した。記録上、当該公判期日に関する被告人への召喚状の送達や期日通知がなされた形跡は一切認められなかった。
あてはめ
本件では、被告人の出頭がないまま実質審理が行われている。刑事訴訟において被告人の出頭は原則として審判の条件であり、特に召喚や通知という基本的手続が欠如している場合、被告人は防御の機会を完全に奪われたといえる。記録上、召喚等の形跡が全く認められない以上、手続の適正を著しく欠くものであり、原判決を維持することは著しく正義に反すると解される。
結論
原判決の訴訟手続には重大な法令違反があるため、原判決を破棄し、本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
被告人の出頭権が保障されない状態での審理が、絶対的控訴理由(379条等)と同様に、上告審における職権破棄事由となり得ることを示す。実務上、期日通知の有無は記録によって厳格に判断されるべきであることを強調する際に用いる。
事件番号: 昭和25(あ)544 / 裁判年月日: 昭和25年11月9日 / 結論: 棄却
記録によれば、所論原審公判期日については、被告人の召喚及び弁護人に対する通知等いずれも適法になされていたにも拘らず、被告人及び弁護人は右期日に出頭しなかつたため、原審裁判長は被告人のため弁護士Aを弁護人に選任して公判に立会せしめ、さきに長谷川寛弁護人の提出した控訴趣意書に基ずき弁論をさせた上結審したものであることが認め…