少年法第二〇条による検察官送致決定をした裁判官が、後にその刑事事件の審判に関与しても裁判官除斥の原因とならず、憲法第三七条第一項に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判決(昭和二四年新(れ)第一〇四号同二五年四月一二日判決、刑集四巻四号五三五頁)の趣旨に徴して明らかである。
少年法第二〇条による検察官送致決定をした裁判官が後にその刑事事件の審判に関与することと憲法第三一条第一項
憲法37条1項,少年法20条
判旨
少年法20条に基づく検察官送致決定(逆送決定)をした裁判官が、後にその刑事事件の審判に関与することは、裁判官の除斥原因に当たらず、公平な裁判所の審理を受ける権利を規定した憲法37条1項にも違反しない。
問題の所在(論点)
少年法20条による検察官送致決定に関与した裁判官が、その後の刑事事件の審理に関与することが、刑事訴訟法20条(除斥原因)に該当するか、あるいは憲法37条1項の定める「公平な裁判所」の原則に違反するか。
規範
刑事訴訟法20条各号に掲げられた除斥事由は限定列挙であり、それ以外の職務関与については、直ちに不公平な裁判をするおそれがあるとはいえない。また、前審に関与した裁判官の除斥(同条7号)における「前審」とは、下級審の判決を指し、同一審級における先行手続は含まれない。したがって、少年保護事件における検察官送致決定は、刑事事件の審判とは審級を異にする「前審」には当たらず、これに関与した裁判官が刑事訴訟の審判に関与することは許容される。
重要事実
被告人が少年であった際、家庭裁判所において少年法20条に基づき検察官送致の決定(逆送決定)がなされた。その後、起訴された刑事事件の審判において、当該逆送決定を行った裁判官が裁判に関与した。弁護人は、このような職務関与は不公平な裁判を招くものであり、憲法37条1項に違反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和37(あ)3074 / 裁判年月日: 昭和38年4月12日 / 結論: 棄却
少年法第二〇条による検察官送致の決定をした裁判官が後にその刑事事件の審判に関与しても裁判官除斥の原因とならない(当裁判所昭和二七年(あ)第五四七四号同二九年二月二六日第二小法廷決定、刑集八巻二号一九八頁参照)。
あてはめ
本件における検察官送致決定は、家庭裁判所による保護処分の要否を判断する一環としてなされるものであり、刑事事件の事実認定を確定させる終局判決ではない。これを刑事訴訟法20条7号の「前審」と解することはできない。また、憲法37条1項の要請する公平性は、具体的な除斥事由として法定されている範囲において担保されており、逆送決定への関与という事情のみをもって直ちに不公平な裁判官による審理であると評価することはできない。したがって、本件における裁判官の関与は適法である。
結論
少年法20条による検察官送致の決定をした裁判官が、後にその刑事事件の審判に関与しても、裁判官の除斥原因とならず、憲法37条1項にも違反しない。
実務上の射程
刑事訴訟における「除斥」の限定解釈を確認した判例である。少年事件の特則的な手続から刑事手続への移行に際し、先行する判断(逆送決定)が後続の公判に与える影響を否定し、職務執行の適法性を維持する実務指針となる。答案上は、刑訴法20条7号の「前審」の定義(審級を異にする下級審の判決)を論じる際の補強材料として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)1708 / 裁判年月日: 昭和29年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法20条に基づく検察官送致の決定をした裁判官が、その後の刑事訴訟において審判に関与することは、刑事訴訟法20条7号にいう「前審の裁判」に関与した場合には当たらない。 第1 事案の概要:少年であった被告人Aについて、家庭裁判所の裁判官が少年法20条に基づき検察官送致(逆送)の決定を行った。その後…
事件番号: 平成17(し)346 / 裁判年月日: 平成17年8月23日 / 結論: 棄却
少年法20条による検察官送致決定に対しては,特別抗告をすることはできない。