判旨
死刑判決が正当化されるためには、犯行の残忍性、被害者の落ち度の有無、遺族の処罰感情といった諸般の事情を慎重に考慮し、被告人の刑事責任が極めて重いと認められることが必要である。
問題の所在(論点)
死刑の選択が憲法36条の「残虐な刑罰」に該当せず、量刑不当ともいえないための判断基準および考慮要素の特定。
規範
死刑の選択が許容されるか否かは、犯行の動機、態様の残忍性、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の前科や反省の状況等の諸般の事情を総合考慮し、その罪責が誠に重大であって、極刑の適用がやむを得ないと認められる場合に判断される。
重要事実
被告人は、自身の欲望を充足させるために、何ら落ち度のない夫婦2名を殺害し、金品を奪う強盗殺人事件を起こした。被告人には前科がなく、平素は家業に励んでいたという有利な事情も存在したが、殺害方法が極めて残忍であり、幼い子供を遺族として残すという悲痛な結果を招いた。
あてはめ
本件では、有利な事情として前科がなく真面目な生活態度であったことが認められる。しかし、犯行は身勝手な欲望に基づくものであり、無辜の夫婦を殺害した事実は極めて重大である。また、殺害方法に示された残忍性や、親を失った幼い遺族の悲痛な状況を考慮すると、被告人の刑事責任は極めて重い。これらの諸事情を慎重に考慮すれば、第一審の死刑判決を維持した原判決の判断は正当であるといえる。
結論
被告人の刑事責任は誠に重く、諸般の事情を慎重に考慮した上で死刑を是認した原判断は妥当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
永山基準(最判昭58.7.8)へと繋がる死刑選択の考慮要素を端的に示した事例。答案では、死刑の是非が問われる際の「諸般の事情」の具体化(犯行態様、動機、結果、遺族感情)の論証として活用できる。
事件番号: 昭和57(あ)842 / 裁判年月日: 昭和62年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状の諸点(永山基準)を総合考慮し、その罪責が極めて重大で、衡平の失当が認められない場合に許容される。 第1 事案の概要:被告人は、約9か月の間に、未成年者誘拐、殺人、死体遺棄、強盗殺人、強…
事件番号: 昭和42(あ)1375 / 裁判年月日: 昭和43年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許されるのは、犯行の動機、態様、結果、社会的影響、被告人の態度等の諸般の情状を照らし、極刑を科すことがやむを得ないと認められる場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人が特定の犯罪行為(詳細は判決文からは不明)を行い、第一審および控訴審において極刑(死刑)の判決を受けた。被告人側は事実…
事件番号: 昭和62(あ)192 / 裁判年月日: 平成2年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択については、犯行の罪質、動機、態様、結果、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の年齢、前科、犯行後の情状などの諸要素を総合考慮し、その刑の選択がやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、強盗殺人罪により無期懲役に処せられ、仮出獄中の身であった。被告人は、居直り強…
事件番号: 平成16(あ)932 / 裁判年月日: 平成19年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑適用に際しては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、罪責が誠に重大であって、極刑がやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀の上、利得目的で2名の男性をそれぞれけん銃で頭部を…
事件番号: 昭和57(あ)303 / 裁判年月日: 平成2年2月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択は、犯行の計画性、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、及び被告人の役割等を総合的に考慮し、その刑責が極めて重大であって罪刑の均衡や一般予防の観点からやむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者Aと共謀の上、約1か月の短期間に、何ら落ち度のない女性2…