銀行支店長らを脅迫して畏怖させ、共犯者の経営する会社に対する融資名下に、同支店における右会社の当座預金口座に金九、七四八、九〇〇円の入金の記帳をさせた行為は、人を恐喝して財産上不法の利益を得た場合に当り、刑法第二四九条第二項に問擬するのが相当である。
銀行支店長らを脅迫して融資名下に同支店における犯人の当座預金口座に一定額の入金の記帳をさせた行為に対する擬律
刑法249条
判旨
人を恐喝して銀行の当座預金口座に入金の記帳をさせた行為は、刑法249条2項にいう「財産上不法の利益」を得た場合に該当し、恐喝利得罪を構成する。
問題の所在(論点)
銀行を恐喝して預金口座への入金記帳を行わせる行為について、刑法249条1項の恐喝罪(財物奪取)を適用すべきか、それとも同条2項の恐喝利得罪を適用すべきかが問題となる。
規範
刑法249条2項にいう財産上の利益とは、財物以外の財産的価値のある利益を指す。銀行員を脅迫して自己または第三者の預金口座に一定金額の入金記帳を行わせることは、当該金額相当の預金債権を取得させることを意味し、これが財産上不法の利益に該当する。
重要事実
被告人は、共犯者らと共謀のうえ、銀行支店長らを脅迫して畏怖させた。その結果、共犯者が経営する会社の当座預金口座に対し、融資名目で金9,748,900円の入金の記帳を行わせた。
あてはめ
本件では、被告人らが銀行支店長らを脅迫して畏怖させたことにより、預金口座への入金記帳という形式で融資を実行させている。預金通帳等への記帳自体は物理的な「財物」の交付を伴うものではなく、預金債権という「財産上の利益」を発生させるものである。したがって、人を恐喝して預金口座に入金記帳をさせた事実は、まさに人を恐喝して財産上不法の利益を得た場合に当たる。一審および原審が1項(財物恐喝)を適用したのは誤りであるが、2項(利得恐喝)の成立は否定できない。
結論
本件行為は刑法249条2項に該当し、恐喝利得罪が成立する。
実務上の射程
預金口座への振込や記帳を行わせる行為が、財物奪取ではなく利益移転であると明示した重要判例。2項恐喝の成立を認める際の標準的な判断枠組みとして、強盗利得罪(236条2項)の解釈にも類推適用される。
事件番号: 昭和28(あ)5318 / 裁判年月日: 昭和30年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】2項恐喝罪の成立には、恐喝行為と不法な財産上の利益を得たこととの間に因果関係が必要であり、被害者の特定がなされていることを要する。 第1 事案の概要:被告人は、遊興施設等において恐喝行為に及び、その結果として遊興費等の支払を免れた。第一審判決では、被告人の各所為によって「同額の財産上不法の利益を受…
事件番号: 昭和32(あ)2716 / 裁判年月日: 昭和33年3月6日 / 結論: 棄却
恐喝罪における害悪通知の方法には制限がないから、第一審判決判示の如く被告人が被害者に判示暴行を加え、さらに判事の如く申し受けて同人をして若しその要求に応じないときはさらに暴行等いかなる危害を加えるかも知れないと畏怖せしめたような場合には、暴行も恐喝罪の手段となり得る。