判旨
労働組合法1条2項の刑事免責は、労働組合の行為が正当な範囲内にある場合にのみ認められ、暴力の行使に至る行為は正当な組合活動とはいえない。したがって、暴力行為を伴う争議行為等については、刑事上の免責規定の適用は否定される。
問題の所在(論点)
労働組合の活動に伴い暴力の行使が行われた場合、労働組合法1条2項が規定する刑事免責の適用を受ける「正当な行為」に該当するか。
規範
労働組合法1条2項による刑事免責が認められるためには、当該行為が「労働組合の正当な行為」であることが必要である。正当性の判断にあたっては、目的の正当性のみならず、手段の相当性が要求される。特に、身体的自由や安全を侵害する「暴力の行使」は、特段の事情がない限り、労働組合としての正当な活動の範囲を逸脱するものと解すべきである。
重要事実
被告人らは、労働組合活動の一環として争議行為等に関連する行動をとったが、その際、他者に対して暴力を行使するに至った。弁護人は、当時の公共企業体等労働関係法(公労法)4条3項の規定が憲法28条等に違反すると主張したが、原審は被告人らの行為自体が暴力を伴うものであり、正当な組合活動には当たらないと判断して刑事責任を肯定した。被告人側はこれを不服として上告した。
あてはめ
本件における被告人らの所為は、事実関係に照らせば明らかに「暴力の行使」に当たるものである。労働組合法1条2項が刑罰を免除する趣旨は、健全な労使関係形成のための正当な行為を保護することにあるが、暴力は法の許容する争議手段の枠外にある。したがって、暴力行使を伴う本件行為は正当な組合活動の範囲を逸脱しており、同条項の適用を受ける余地はないと評価される。
結論
暴力の行使に及んだ行為は、労働組合法1条2項の正当な行為には当たらない。したがって、刑事免責は認められず、刑罰を科した原判決は妥当である。
事件番号: 昭和42(あ)1053 / 裁判年月日: 昭和42年10月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合の行為であっても、暴力の行使に出ることは正当な団結権の行使とは認められず、労働組合法1条2項の刑事免責の対象とならない。 第1 事案の概要:被告人らは、労働組合活動の一環として本件行為に及んだが、その態様は暴力の行使を伴うものであった。被告人らは、憲法28条が保障する団結権等に基づく正当な…
実務上の射程
争議行為の正当性(特に手段の相当性)が問題となる事案において、刑事免責の限界を示す重要判例である。暴力行使があれば直ちに正当性が否定されるという判断枠組みは、実務上も確立した規範として機能しており、答案作成時も「手段の相当性」の検討において、暴力の有無を決定的なメルクマールとして活用すべきである。
事件番号: 昭和43(あ)15 / 裁判年月日: 昭和43年10月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合による団体行動であっても、暴力の行使を伴う行為については、憲法28条が保障する正当な団体行動の範囲を逸脱し、違法性が阻却されない。 第1 事案の概要:被告人両名を含む労働組合員らが、労働争議に関連する活動の過程において、暴力の行使を伴う所為(本件所為)に及んだ。被告人らは、かかる行為が憲法…
事件番号: 昭和39(あ)161 / 裁判年月日: 昭和39年10月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合員による暴力の行使は、それが団結のための平和的説得の域を脱している場合には、憲法28条が保障する団体行動権の行使には当たらず、正当な業務行為として刑事免責を受けることはない。 第1 事案の概要:被告人は、労働組合員ら4、5名とともに、コークスの傾斜面に立って貨車に手をかけていた被害者の背後…
事件番号: 昭和38(あ)1052 / 裁判年月日: 昭和40年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項ただし書の「暴力の行使」に該当するか否かは、当該行為が社会通念上許容される限度を超えるものであるか否かによって判断される。社会通念上の限度を超えると認められる場合は、刑法上の正当行為(同法35条)としての違法性阻却を認めない。 第1 事案の概要:被告人らの原判示所為(具体的な事案…