所論は憲法第三八条第一項違反等違憲をいう点もあるが、必ずしも被告人の出頭を要しない控訴審の手続において、刑訴法第二九一条第二項の規定が準用されないことは明白というべきであるから、右違憲の主張は前提を欠く。
刑訴法第二九一条第二項の規定は控訴審に準用されるか
憲法38条1項,刑訴法291条2項
判旨
控訴審において、刑事訴訟法291条2項が準用される必要はない。必ずしも被告人の出頭を要しない控訴審の手続においては、起訴状朗読および黙秘権告知等の手続を欠いても憲法38条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
必ずしも被告人の出頭を要しないとされる控訴審の手続において、刑事訴訟法291条2項が準用されないことは、憲法38条1項等の規定に照らし違憲といえるか。
規範
必ずしも被告人の出頭を要しない控訴審の手続においては、第一審の公判手続のうち起訴状の朗読および黙秘権の告知等(刑事訴訟法291条2項)に関する規定は準用されない。
重要事実
被告人が控訴審において、第一審の公判開始手続である刑事訴訟法291条2項(起訴状朗読、権利告知等)が準用されないまま手続が進められたことに対し、自己に不利益な供述を強要されない権利を保障する憲法38条1項等に違反すると主張して上告した事案。
事件番号: 昭和45(あ)2582 / 裁判年月日: 昭和46年4月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴裁判所が被告人側の証人尋問を行わず、検察官申請の証拠のみに基づき一審の執行猶予判決を破棄して実刑を言い渡すことは、憲法31条および37条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は第一審において執行猶予付の判決を受けたが、控訴審(原審)において検察官が申請した証拠のみが採用・取調べられた。一方で…
あてはめ
控訴審は事後審としての性質を有し、刑事訴訟法上、必ずしも被告人の出頭を要しないものとされている。このような手続的性質に鑑みれば、公判開始冒頭における起訴状の朗読や権利告知を定めた刑事訴訟法291条2項の規定が準用されないことは法理上明白である。したがって、これを行わない控訴審の手続に憲法違反の点はないと解される。
結論
控訴審において刑事訴訟法291条2項は準用されず、これを行わなくとも憲法38条1項等に違反しない。
実務上の射程
控訴審の手続構造(事後審性)を前提に、第一審の公判手続規定がどこまで準用されるかを判断する際の基準となる。特に被告人の出頭を要しない手続における手続的保障の限界を示すものとして位置づけられる。
事件番号: 昭和43(あ)2617 / 裁判年月日: 昭和44年4月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】道路交通法72条1項後段に定められた運転者の報告義務は、憲法38条1項の自己負罪拒否特権に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、道路交通法違反の罪に問われ、同法72条1項後段が定める交通事故の際の運転者による報告義務が憲法38条1項に違反すると主張して上告した。 第2 問題の所在(論点):道路…
事件番号: 昭和42(あ)2592 / 裁判年月日: 昭和43年5月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】道路交通法72条1項後段に基づく交通事故の内容報告義務は、憲法38条1項が保障する自己に不利益な供述の強要禁止に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、道路交通法違反等の罪に問われた事案において、同法72条1項後段が定める交通事故の内容報告義務を負うことが、自己負罪拒否権を保障する憲法38条1項…
事件番号: 昭和51(あ)255 / 裁判年月日: 昭和51年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】道路交通法72条1項が規定する交通事故の報告義務(前段)および警察官への申告義務(後段)は、自己に不利益な供述を強要するものではなく、憲法38条1項に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、道路交通法違反(ひき逃げ・報告義務違反等)に問われた刑事被告人である。上告人は、同法72条1項前段(救護義…
事件番号: 昭和46(あ)2164 / 裁判年月日: 昭和48年2月27日 / 結論: 棄却
道路交通法七二条一項後段、一一九条一項一〇号が憲法三八条一項に違反しないことは、当裁判所昭和三七年五月二日大法廷判決(刑集一六巻五号四九五頁)の趣旨に照らして明らかである。