共犯者の犯罪事実に関する供述(自白)は、被告人に対する関係においては、被告人以外の者の供述であつて、憲法第三八条第三項にいわゆる「本人の自白」にあたらないことは当裁判所昭和二九年(あ)第一〇五六号同三三年五月二八日大法廷判決(集一二巻八号一七一八頁)の判示するところであり、今なお右判例を変更すべきものとは認められない。
被告人本人との関係における共犯者の犯罪事実に関する供述と憲法第三八条第三項にいわゆる「本人の自白」
憲法38条3項,刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法319条
判旨
共犯者の自白は、憲法38条3項にいう「本人の自白」には当たらない。したがって、共犯者の供述を被告人の自白の補強証拠とすること、または共犯者相互の供述を補強証拠として犯罪事実を認定することは憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
共犯者の供述(自白)が憲法38条3項にいう「本人の自白」に含まれるか。また、共犯者相互の供述を補強証拠として犯罪事実を認定することが許されるか。
規範
憲法38条3項が「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が、本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」と規定する「本人の自白」とは、当該被告人自身の供述を指す。共犯者の供述は、被告人との関係では「他人の供述」に該当し、同条項の制限を受けない。したがって、共犯者の自白は、被告人の自白に対する補強証拠となり得る。
重要事実
被告人Aおよび被告人Bが共犯関係にある罪について、裁判所が被告人Aの供述および被告人Bの供述を互いに補強証拠として用いて犯罪事実を認定した。これに対し、弁護人がかかる証拠評価は憲法38条3項の「本人の自白」による処罰禁止の趣旨に反すると主張して上告したものである。
あてはめ
共犯者の供述は、自己の犯罪事実を認める点では自白であるが、共同被告人を含む他者の犯罪事実に関する限り、被告人以外の者の供述(証人としての性格を有するもの)である。本件において、被告人AとBの各供述は互いに他人の供述としての性質を有するため、これらを相互に補強証拠として用いることは、自己の自白のみで有罪とされることを禁じた憲法の趣旨を潜脱するものではないといえる。
結論
共犯者の供述は「本人の自白」に当たらない。ゆえに、被告人の供述と共犯者の供述を互いに補強証拠として犯罪事実を認定することは合憲である。
実務上の射程
共犯者の自白に補強証拠としての能力を認める確立した判例である。司法試験においては、補強証拠の要否や範囲が問われる際、共犯者の自白が「本人の自白」に含まれないことを示す根拠として、憲法38条3項および刑訴法319条2項の解釈において必須の知識となる。実務上も、共犯者の供述によって被告人の自白の証明力を補強し、有罪認定を行う際の理論的基礎として機能する。
事件番号: 昭和43(あ)964 / 裁判年月日: 昭和43年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の自白は、被告人に対する関係では「本人の自白」には当たらない。したがって、被告人自身の自白がない場合であっても、共犯者の自白のみに基づいて被告人を処罰することは憲法38条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が共犯者とともに犯罪に及んだとされる事案において、共犯者の供述調書等が証拠とし…