判旨
憲法32条は裁判所以外の機関によって裁判されない権利を保障し、同法37条1項の「公平な裁判所」とは偏頗や不公平のおそれのない組織・構成をもつ裁判所を意味する。したがって、当事者が納得できない裁判や攻撃防御の機会が不十分であるといった主張のみでは、直ちにこれら憲法の条項に違反するものとはいえない。
問題の所在(論点)
裁判所による手続の進め方や内容に当事者が不服を持ち、十分な攻撃防御の機会が与えられなかったと主張する場合、それが直ちに憲法32条の「裁判を受ける権利」や憲法37条1項の「公平な裁判所による裁判」の侵害にあたるか。
規範
憲法32条は、国民が憲法または法律に定められた裁判所以外の機関によって裁判をされない権利を保障するものである。また、憲法37条1項が規定する「公平な裁判所」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織と構成をもつ裁判所を意味する。
重要事実
被告人は、原審(控訴審)における裁判手続において、被告人側に十分な攻撃防御の機会が与えられず、納得のいかない裁判がなされたと主張した。この手続上の不備を理由として、憲法32条(裁判を受ける権利)および同法37条1項(公平な裁判所の裁判を受ける権利)に違反する旨を訴えて上告した。
あてはめ
憲法32条の趣旨は「裁判所以外の機関による裁判」の禁止にある。本件において、被告人は法律に基づき設置された裁判所によって裁判を受けており、同条が禁止する事態は生じていない。また、憲法37条1項の「公平な裁判所」は裁判所の「組織・構成」の客観的な公平性を指すものであり、本件のような「攻撃防御の機会が不十分である」といった裁判運営上の不服や主観的な納得感の欠如は、裁判所の組織や構成自体の不公平を意味するものではない。
結論
原審の裁判が被告人にとって納得のいかないものであったとしても、それが直ちに憲法32条または37条1項に違反するものとはいえないため、上告は棄却される。
実務上の射程
裁判の不当性を憲法違反として主張する際、憲法32条や37条1項を「内容や手続の妥当性」の根拠として安易に引用することを否定する射程を持つ。答案上は、公平な裁判所の意義を問われた際に、それが「組織・構成の公平」を指すものであり、個別の訴訟指揮への不満を直ちに包含するものではないことを示す論拠として活用できる。
事件番号: 昭和54(あ)305 / 裁判年月日: 昭和54年11月19日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和47(あ)1768 / 裁判年月日: 昭和48年1月25日 / 結論: 棄却
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