判旨
被告人が一部の罪についてのみ控訴し、検察官が控訴しなかった場合、控訴されなかった罪の部分は確定し、控訴審の審判対象から外れるため、これについて審判を行うことは違法である。
問題の所在(論点)
併合罪の一部の事実についてのみ控訴がなされ、他の部分について控訴期間が経過した場合、当該他の部分は確定するか。また、控訴審がその確定した部分を審判対象とすることは許されるか。
規範
併合罪(刑法45条)として起訴された数個の事実のうち、被告人が一部の事実についてのみ控訴を申し立て、検察官も控訴しなかった場合、控訴されなかった部分は控訴期間の経過により確定する。この場合、上訴不可分の原則(刑訴法348条参照)は及ばず、控訴審は確定した部分を審判の対象とすることはできない。
重要事実
被告人は、第一審判決において2件の恐喝罪と1件の賭博罪について有罪と認められ、恐喝罪につき懲役刑、賭博罪につき罰金刑を言い渡された。被告人はこのうち恐喝罪に関する部分のみを限って控訴を申し立て、検察官は控訴を申し立てなかった。しかし、原審(控訴審)は、第一審判決に係る事件の全部について審判を行い、すでに確定したはずの賭博罪についても第一審判決を破棄した上で、改めて罰金刑に処する旨の判決を言い渡した。
あてはめ
本件では、被告人が控訴の対象を恐喝罪に限定し、検察官が控訴しなかった以上、賭博罪に関する部分は控訴期間の経過(昭和40年11月12日)をもって確定している。したがって、原審には恐喝罪に関する部分のみが係属しており、賭博罪については係属していなかったといえる。それにもかかわらず、原審が賭博罪についても破棄自判したことは、係属していない事件を審判したものであり、重大な訴訟手続の違法(刑訴法411条1号)にあたる。
結論
原判決のうち、賭博罪に関する部分は係属していない事件を審判した違法があるため、当該部分は破棄を免れない。
実務上の射程
併合罪において一部上訴がなされた場合、その対象とならなかった部分は原則として確定し、上訴審の審理対象から外れることを示した判例である。刑訴法348条等の上訴不可分の原則が、併合罪の関係にある別個の犯罪事実にまで当然に及ぶわけではないことを再確認する際の実務上の指標となる。
事件番号: 昭和43(あ)2538 / 裁判年月日: 昭和44年6月26日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】併合罪として1つの判決で言い渡された複数の罪につき、被告人が一部の罪についてのみ控訴し、検察官も控訴しなかった場合、控訴されなかった罪の部分は控訴期間経過により確定し、控訴審の審判対象から除外される。 第1 事案の概要:被告人は第一審において、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反、賭博開張…
事件番号: 昭和43(あ)2344 / 裁判年月日: 昭和44年10月2日 / 結論: その他
大蔵大臣の免許を得ることなく、自己の営業資金を調達する目的で、自ら講元となつて講を始め、その講員は、人的あるいは地域的関係によらず掛金の支払能力によつて認定したうえ、個別に交渉してこれに加入させ、講員も講元の個人的資力を信頼して他の講員の氏名も知らないままこれに加入し、講員の掛金不払の際には、講元が自らその支払の責を負…
事件番号: 平成24(あ)512 / 裁判年月日: 平成25年3月5日 / 結論: 棄却
本位的訴因とされた賭博開張図利の共同正犯は認定できないが,予備的訴因とされた賭博開張図利の幇助犯は認定できるとした第1審判決に対し,検察官が控訴の申立てをしなかった場合に,控訴審が職権により本位的訴因について調査を加えて有罪の自判をすることは,職権の発動として許される限度を超えるものであり,違法である。
事件番号: 昭和26(れ)1524 / 裁判年月日: 昭和26年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、弁護人が主張する事由は単なる事実誤認の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に該当しないと判断した。また、職権による破棄を定めた同法411条を適用すべき事由も認められないとして、上告を棄却した。 第1 事案の概要:上告人(被告人)側が、原判決(第2審)の認定事実について不服を申し立て…